世界でいちばん不運で幸せな私
なぜだかいつも、からまわり。ババーン! 「世界でいちばん不運で」ありながら「幸せ」とはこれいかに? 謎の題名ですが、映画を見てもさっぱり意味がわからないのでご安心ください。英語題は、“Love Me If You Dare”――度胸があるなら愛してみな! フランス語題は“Jeux d'enfants”――えーっと、「子供の遊び」でしょうか? ふむふむ。子供時代の遊びを大人になってもえんえん続ける男女のお話。
舞台はフランス。母親がガンで死にそうな少年ジュリアンと、ポーランド移民でいじめられっ子ソフィーは、「のる? のらない?(Cap ou pas cap?)」というゲームを始めます。そう言われたら必ず「のる!(Cap!Bien sur!)」と答えねばならず、答えてしまうと、相手の無体な要求を実行しなければならない、というゲーム。二人はすっかりゲームに夢中になり、成長し、大人になって、お互いに恋愛感情を持ちながらも、それすらゲームなのかも? と素直になれず、周りに迷惑をかけまくるというお話です。
これが長編初監督(兼・脚本)ヤン・サミュエルは、イラストレーターとして活躍されていた方だそうで、ガチャガチャした映像スタイルは、ジュネ & キャロ作品風、ロマンチック具合は『アメリ』風でございます。
二人の悪戯は『アメリ』にも似て周囲の気分・感情をあまり考えていないもの、さらに単発的・思いつきの域を出ず、見ていてだんだん気分が悪くなってきます。
結婚式のケーキをひっくりかえす、陽気に意味なく『バラと酒の日々』を唄ってお葬式をぶち壊す、校長室で小便をもらす…など、「無邪気」の域をはるかに超えて洒落で済まないものばかり、いや、子供のうちならまだいいとして(よくないけど)、成長してもえんえん続けるのでさすがに温厚な私も「氏ね」と一人ごちたらホントに死んじゃって、溜飲を下げたのであった。でも生き返って年寄りになっても続けてて、よくわかりません。
恋する二人は周囲が見えないものなのでしょうけど、またヤン・サミュエル監督はアーティストなお方ですので、世間の常識からはずれていてもよいでしょうけど、私のような俗情と結託した常識人にとって、二人の奇行の数々は見るに耐えず、邪悪といってもよいもので、いや、邪悪でもいいのですけど単に周囲に迷惑をかけるだけなのが腹立たしいのです。
真に邪悪な悪戯は誰にも悪戯と気づかれず、周囲の人をも喜ばせてしまい、しかけた者がこっそりガッツポーズしてほくそ笑むようなものでなければならない。二人がしかける悪戯は、あまりに幼稚すぎ、トンチなさすぎ、と、私は一人ごちたのでした。
とはいえ、この作品、あろうことかヨーロッパ各国でヒットを飛ばしたそうですから、日本人・私とヨーロッパ人では「子供の悪戯」に対する考えがまるで違うのかも? と民族・地域性の違いを考えさせられますし、と、いうか、私の上記感慨は特殊的・個人的なものであると存じております。とりあえず映像的にはいくつか面白いシーンがあってテンポもよく、ヒロインは『ビッグ・フィッシュ』で息子の嫁さん役だったマリオン・コティヤールですのでオススメです。
★★(☆= 20 点・★= 5 点)