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 Movie Review 2003・9月22日(MON.)

フリーダ

公式サイト: http://www.frida.jp/

『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のムチムチ吸血鬼で脚光を浴びたセクシーダイナマイト女優サルマ・ハエックさんは、かねてより母国メキシコの女流画家フリーダ・カーロの生涯を演じたい! と切望されていたそうで、このたびミラマックス製作で実現の運びとなりました。ミラマックスといえば、『シカゴ』『めぐり逢う時間たち』など、インテリジェンスあふれる作品を連発する会社、ですが私にとっては「何だかよくわかんない映画を作りがちな会社」なのであった。

 監督はジュリー・テイモア。カッコいい映像と、眠いストーリーの超大作『タイタス』に次ぐ今作、CG も使ってフリーダの人生のワンシーンがそのまま絵画に変わっていく華麗なテクニック、映像美の連発です。いきなりブラザース・クェイが担当した人形アニメが登場したり、様々なテクニックが駆使され見る者を飽きさせないのであった。また、これこれの自画像は、これこれの経緯で描かれたのですよ、という「日曜美術館」もビックリのフリーダ入門編になっております。

 と、華麗な映像テクニック、俳優さんのソックリショーぶりなど見どころ満載なのですが、どうにもエピソードの羅列に終始し、グググッと盛り上がらないのでございます。泣き所が見あたらないと申しましょうか。

 結局のところどういう話かといえば、フリーダが気鋭の画家リベラと結婚してみたら、旦那は浮気しまくって妹にも手を出す始末、こりゃ辛抱できんとフリーダもせっせと不倫・浮気に精を出して自画像を描いていく、という、たいそうベタなお話に色んな挿話を散りばめた印象、何かが足りない感じです。

 伝記映画といえば、新聞王ハーストをモデルにしたと言われる『市民ケーン』(オーソン・ウェルズ監督)では、死に及んで残した「バラのツボミ」というキーワードが作品全体を貫きます。また、ブルース・リーの生涯を描いた『ドラゴン/ブルース・リー物語』(ロブ・コーエン監督)では、ブルース・リーは早死にする運命に一貫して抗い続けた男として描かれました。この『フリーダ』では、そういうフリーダの人生を貫く何ものか? が、よくわからないのでございます。別にいいのですけど。

 というか、フリーダにしてもリベラにしてもキャラ造型に意外性が乏しいのです。例えば『クレイドル・ウィル・ロック』(ティム・ロビンス監督)でも紹介された、リベラがロックフェラーセンター玄関に壁画を描いた挿話が語られます。下絵にはなかったレーニンの顔が描かれ、ロックフェラー・Jr が修正を要求、リベラはそれをはねつけたため壁画は破壊されます。この挿話が明らかにするのは、「リベラは、私生活では浮気しまくるセックスマシーンでも、芸術に対しては真剣・純粋な画家だった」という、紋切り型なキャラです。リベラにしても、フリーダにしても、さらにトロツキーにしても、実際の彼らは映画の中の人たちとはだいぶん違うのでしょうね、と私は一人ごちたのでした。

 そんなことはどうでもよいのです。映画は生来見せ物なので、フリーダの絵画を生身の人間が再現する活人画として楽しめますし、遺跡マニア必見のテオティワカンのピラミッドロケなど、メキシコの風物もグーでございます。高校生から 47 歳で死ぬまでのフリーダをサルマ・ハエック(撮影当時 35 歳)大熱演でオススメです。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Sep-19;

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