偶然にも
最悪な少年
在日韓国人のいじめられっ子・ヒデノリ君(『リリイ・シュシュのすべて』の市原隼人君)は、高校へも行かず街でダラダラ万引きしたりの日々を過ごすうち、自殺した姉の死体を病院から運び出して、渋谷のチーマーのタローさん(池内博之)、これまた万引き常習者の由美さんと博多へドライブ、恐喝などの反社会的行為に明け暮れるお話です。
原作・監督は、「CM 界の鬼才」グ・スーヨンさん、個々のシーンのハッとする描写の数々はさすが CM 界の鬼才である、うむ、と一人ごちたのですが、私は一言申したいのです。
ヒデノリ君と由美さんは万引きの常習者ですが、キミたちヤングは、「万引きなんか誰でもやってるじゃん?」とおっしゃいますか? では、万引きされた店の人がどれだけムカついているか想像したことがあるでしょうか? 映画の中で犯された罪は、映画の中で何らかの形で罰せられなければならない、と私は思うのです。
これが 60 〜 70 年代ならば、「造反有理」とばかりに、反抗することは何でもいいことだ、みたいな風潮があり、万引きなり何なりで社会に反抗することへの共感は得られたはずです。しかし、今や何でも反抗すればよいという時代ではない、と思うのです。そもそも大人社会に反抗するだけの価値があるのか? と問いたい。
また、60 〜 70 年代にあっても映画の中の反抗者は、大抵「死」という罰を受けてきました。『イージー★ライダー』『俺たちに明日はない』などなど。タローさんは、ナイフで胸を刺されるという罰を受けますが、ヒデノリ君と由美さんはノホホンとした生活を続けられるようで、映画の中では罰せられず、それでいいのでしょうか。
と、いうか、映画は、ヒデノリ君が何者かに自らの阿呆な行動の数々を語りかけるというスタイルで、『ライ麦畑でつかまえて』というか、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を意識されているのかもしれませんが、それなのにヒデノリ君は、教師が麻薬売買にかかわっている現場を盗撮、それをネタに教師からの咎めをかわします。そんなに狡くてよいのでしょうか。ヒデノリ君、キミの狡猾さを私は軽蔑します。まったくキミは偶然にも最悪の少年ですね、って、まったくタイトル通りの映画でした。って、よくわかりませんが、ともかくヒデノリ君、日々そんなにつまらなさそうに過ごさずに、高専に入ってロボコンにでも挑戦してみてはいかがかな? とご意見申し上げたいのでした。
そんなことはどうでもよくて、意表を突く描写の数々が散りばめられた新感覚の映画で、好き/嫌い、面白い/面白くないがハッキリ別れる作品でございます。クリエイティヴな方にはウケるのではないでしょうか? わかる、わからないというより、感じる映画、あなたがナウなヤングかどうかを判定するリトマス試験紙、さてあなたはどう見るか? ナウなヤングな方にオススメです。
★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-Sep-25;