京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 03 > Reviews 030901
 Movie Review 2003・9月1日(MON.)

ファム・ファタール

 ブライアン・デ・パルマ監督最新作。デ・パルマといえば、アルフレッド・ヒッチコック大好き、とにかく華麗なテクニックを披露したがる監督として定評があり、時には『アンタッチャブル』『ミッション・インポシブル』では雇われ監督に徹してソコソコの作品も撮りつつ、かたや『レイジング・ケイン』『スネーク・アイズ』などやりたい放題、好き放題、テクニックバンバンな作品も撮る割り切り上手の監督さんでございます。で今回、ここまで好き放題に撮ったのは『殺しのドレス』か『ボディ・ダブル』以来か? そう、デ・パルマ監督、実はエロ好き、華麗なテクニックを駆使しつつ、美女の絡みもあるでよウホッ、でございます。して今回ファム・ファタールを演じるは『X- メン』シリーズのミスティークことレベッカ・ローミン=ステイモス、とワクワクでございますね。

 オープニング宝石強盗のくだり、カットバックなどはバチグンの素晴らしさで、さすがデ・パルマ! ですが、話が進むにつれ無理矢理さが段々と目につくのであった。例えば主人公ミスティークさんは奪った宝石を持ち逃げして黒人 2 人組に追いかけられるのですけど、黒人 2 人「宝石をどこに隠した!」と問いつめながら、彼女を高いところからポーンと放り投げたりするのですね。おいおいミスティークさんが死んだら宝石のありかがわからなくなるではないですか? 偶然にも彼女は九死に一生を得るのですけれど、そういう偶然に頼りまくった脚本の穴、都合の良すぎる展開が重なって何でもありになってくると、スリル、サスペンスが生まれようもなく、華麗なテクニックを駆使されても盛り下がって眠くなってまいります。映画に登場するパソコンがマッキントッシュばかりなのも凄い偶然ですね。

 って、そういう展開が無茶なのも実は伏線で、アッと驚くどんでん返しが用意されているのですけれど、あんまりといえばあんまりな結末で、こういうオチは、この作品がオマージュを捧げている 40 〜 50 年代のアメリカ犯罪サスペンス=フィルム・ノワールにありがちなので、別にいいっちゃあいいんですけど、例えばフリッツ・ラング『飾り窓の女』など、ぐいぐい引き込まれていくのが快感ですが、この『ファム・ファタール』の場合、フィルム・ノワールが持つドライブ感が稀薄なのは、ファム・ファタールを描くならファム・ファタールを主人公にしては駄目で、やはりアントニオ・バンデラスを語り手にして、犯罪に巻き込まれて理性では抗いつつ股間が引きつけられてしまうみたいな話にすべきでありましょう。よく知りませんが。

 そんなことはどうでもよくて、デ・パルマいい感じに肩の力が抜けてきているようで、好きなものを好きなように撮る域に達しております。オープニングの曲はボレロそのまんま(音楽は坂本龍一)で、そういう図々しいというか、ダサいことができてしまうのは、老人力がついてきた証拠。1940 年生まれデ・パルマ現在 63 歳、あと数年でバチグンの傑作を連発する予感。カンヌ、パリのロケが素晴らしく、ニュージャージー出身デ・パルマのヨーロッパに対する憧れが全編ににじみ出てる感じでオススメです。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Sep-1;

レビュー目次