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 Movie Review 2003・8月28日(WED.)

トレジャー・
プラネット

 少年少女向け冒険物語の古典『宝島』、舞台を宇宙に移してディズニーがアニメ化。ディズニーアニメというと『ターザン』『ムーラン』など、徹底的に練り上げられた脚本、見事なキャラ立ち、愉快なミュージカル・シーンなどアメリカ映画の伝統を受け継いで、毒にも薬にもならない良質の作品を連発していたものの、近頃は他社製作『モンスターズ・インク』『シュレック』のヒットに較べて低迷状態、『リロ & ステッチ』も辛いものがありました。

 ディズニー・アニメは、70 、80 年代にもとことん低迷したのですけど『リトル・マーメイド』(1989)が突破口を開き黄金時代を迎えたのも束の間、今回の『トレジャー・プラネット』には痛々しさが漂います。監督・脚本は、『リトル・マーメイド』のジョン・マスカー & ロン・クレメンツ、彼らが担当した『アラジン』『ヘラクレス』も上出来の部類だったので期待してもいいかも? ですが、映画に対する期待は常に裏切られるもの、と相場が決まっておりますね。

 まず宇宙が舞台、となるとメカの数々、宇宙人のデザインが重要です。そこには、センス・オブ・ワンダーがなければならないのにだ、作り手に SF マインド(オタクごころ)がないではないですか? と問いつめたい。宇宙人の造型が、妙にグロテスクで、致命的でございます。可愛くなくてグロいだけ、みたいな。

 お手軽に作られる SF ほど辛いものはなく、SF には、ニューイメージの提案がなければなりません。しかるに、このオリジナリティの無さはどうでしょう。昨年のディズニーアニメ『アトランティス』は日本のアニメ『ふしぎの海のナディア』と設定その他がクリソツと騒がれたんですけど、今回の『トレジャー・プラネット』も、藤子・F ・不二雄の『21 エモン』だったりしますねん(参考: http://www009.upp.so-net.ne.jp/wtbw/2003/618/5-1.jpg。やれやれ懲りない人たちですね、というか、厳重に抗議されていないから懲りようがないのですけど、まあ、日本人もパクリは得意ですから、それはよいとして、日本人のパクリにはオリジナルに対するリスペクトがあります。しかるに米人のパクリにリスペクトがあるでしょうかね? 私は、既視感あふれるイメージの数々に目眩を覚えたのでした。とはいえ、米人にパクられまくるほどに日本の文化水準が上がっているのを誇るべきかも?…というか、アメリカの水準が下がっているだけか。やれやれ。

 そもそも SF マインドがないのなら、SF 仕立てなどにせず、スティーヴンソンの原作まんまの設定で忠実に映画化しておけば面白くなるものを…というか、『21 エモン』をそのまま映画化すればいいのに。またまたディズニー冬の時代の到来ですか? と一人ごちたのでした。て、いうか、ディズニーは映画で稼がなくても、ディズニーランドという安定した収入源があり、どうも映画作りに「これがコケたら終わり」みたいな緊張感がなくなってきているような。

 そんなことはどうでもよくて、お子様にはお楽しみいだけるかと存じます。オススメ。

★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Aug-26;

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