藍色夏恋
台北の 17 才女子高生モン・クーロウは、大の仲良しユエチェンから「好きな人がいる」と打ち明けられます。ユエチェンが好きなのは、水泳部の男前チャン・シーハオ。モン・クーロウは、ユエチェンに頼まれ「チャン・シーハオ! 付き合っている娘いる? 友達が付き合いたいと言ってるよ」と聞いたりしてるうち、チャン・シーハオに惹かれていくのであった。ババーン!
と、台湾映画お得意メロウな青春物語でございます。『枯嶺街(クーリンチェ:「枯」の字が違う)少年殺人事件』『恋恋風塵』『青春神話』など傑作多く、なんとなくパンフに川本三郎氏が一文をしたためている印象があり、この『藍色夏恋』のパンフにも、ちゃんと載っているのでひと安心です。
って、よくわかりませんが、友人が好きな男子を、好きになっちゃった女子高生のあれやこれやという超たわいのないお話で、ユエチェンの部屋で、モン・クーロウとユエチェンがきゃっきゃきゃっきゃふざけあうシーンは怒りすら湧いてきます。エドワード・ヤン、ツァイ・ミンリャンがとらえた台湾青少年の憂鬱、殺伐とした気分は微塵もなく、何とも明朗かつロマンチックな作品に仕上がっております。
しかし! この作品が素晴らしいのは、主人公たちが自転車通学していることであった。信号で二人の自転車が並んで停まる。モン・クーロウは、チャンの横顔を盗み見る。「あれれ? 何か見られてるぞ」とチャン・シーハオは視線をモンに向ける。モンは視線を逸らす。自転車にまたがったままで行われる視線のやり取りがよい感じです。
台湾といえば「自転車生産大国」であり、世界最大の自転車会社ジャイアントの本拠地ですね。チャン・シーハオが、ジャイアントのダブルサスペンション MTB で街を疾走するシーンはカッコよろし過ぎ、女子にモテモテなのも肯けます。
チャンとモンが惹かれあって、自転車に乗らないユエチェンが茅の外に置かれていくのは物語の当然の帰結でありましょう。自転車に乗る者同士には、無言のうちに「乗ってますね?」「乗ってますよ!」という魂の交歓がなされているのであった。
そんなことはどうでもよくて、子どもと大人の境界にあって、「男子を好きになる」などまだまだ先のことと思っていたら、そろそろお年頃になっていた、みたいな人生の一瞬の季節がとらえられており、じわーん、しみじみー、と胸に迫るものがあります。ユエチェンが、チャン・シーハオへの思いを断ち切る瞬間は、おかしくもあり泣ける名シーンでございますね。
主人公モン・クーロウを演じるグイ・ルンメイのぶっきらぼうなところが良いし、チャン・シーハオを演じるチェン・ポーリンも高感度バチグンにてオススメです。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-oct-14;