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 Movie Review 2003・10月8日(WED.)

S.W.A.T.

 往年のテレヴィ番組『特別狙撃隊 SWAT』映画版でございます。って、またまたテレヴィの映画化かい! とツッコミたいのはやまやまですが、ハリウッドのネタ切れ具合はまったく深刻なのですよ。

 それはともかく、以下ネタバレ。

 お話をかいつまみますと、どうにも最近 S.W.A.T.の評判が思わしくないので、元・名隊長のサミュエル・L ・ジャクソンが呼び戻され、テコ入れが図られます。サミュエルは、自分でメンバーを集め、訓練を施していたところ、偶然捕まった国際指名手配犯の護送をおおせつかります。ところがこの大物犯罪者、カメラに向かって「オレを逃がしてくれたヤツに 1 億ドルやるぞ!」と叫んだものですからさあ大変。街中の犯罪グループは色めきたち、サミュエル隊を急襲、LA を舞台に、S.W.A.T.と犯罪者たちの戦いの火蓋が切って落とされたのであった! ババーン!

 と、面白そうなんですが、脚本がタコです。CM では大物犯罪者が「1 億ドルやるぞ!」と叫ぶところが流されてますけど、普通ならばこれが物語の発端、「起承転結」でいえば「起」の部分ですよね。驚いたことにこの場面、映画の中盤になってやっと出てくるのですよ。それまで、S.W.A.T. が訓練する様子なんかがノンビリ展開、そもそも、何故サミュエルが呼び戻されたか? なぜ新たな隊を編成しなければならないかも判然とせずダラダラです。

 アイデアはよいのですよ。しかし「構成」がよくないのですね。順序を並べ替えればもっと面白くなるはずです。

  1. フランス人大物犯罪者が、自分を逃がすことに 1 億ドルの賞金をかける。
  2. LA 中の犯罪者が押し寄せてくる。
  3. 現在の S.W.A.T.では太刀打ちできない!
  4. 伝説のあの男を呼べ! その男は、サミュエルだ! ババーン!
  5. サミュエルは、自分好みの隊を作り上げるため、一本釣りでひと癖もふた癖もある連中を集めます。「毒を制するには毒だ!」と犯罪者スレスレのヤツまでつれてきて、サミュエル隊は、やがて「Dirty Dozen (汚い 12 人)」と呼ばれるのであった…。

 …うーむ、メチャクチャ面白そうですね! って、勝手にお話を作ってしまいました。

 また、主役のコリン・ファレル(『デアデビル』のブルズアイ)は、難題が持ち上がるたび「いいアイデアがある!」とトンチを発揮します。どんな壁でも引っ張ってブチ抜いちゃう大砲を自作してたりします。その「ブチ抜いちゃうよ砲」を S.W.A.T. のトラックにきっちり積むところまで描かれ、「おお! これは後々活躍するに違いない!」と普通は先読みしますよね。クライマックスは、飛行機で逃亡しようとする大物犯罪者を S.W.A.T. がクルマで追うのですけど、すわ離陸寸前! ここでコリン・ファレル「いいアイデアがある!」と「ブチ抜いちゃうよ砲」を取り出し飛行機に向けて発射! …と思いきや、「ブチ抜いちゃうよ砲」が無いじゃん! 追跡の過程でリムジンに乗り換えていたのであった。周到に伏線を張りながら、それを回収できないように話を進めてしまうとは…。一生懸命「ブチ抜いちゃうよ砲」を作った小道具さんの苦労は一体?

 それに、そもそも逃がせば 1 億ドルもらえるのに、サミュエル隊はなぜ律儀に粛々と任務をこなすのか?(一人を除く)が謎です。と、いうか、いつものサミュエルならとっとと 1 億ドルをゲッツして、ノンビリとゴルフでもしているはずです。何が彼らを任務に忠実にさせるのか? 隊員たちに、「逃がして 1 億ドルもらうか? 任務を全うするか?」という葛藤が無ければならないし、そこで大物犯罪者の「酷いヤツ」ぶりがキッチリ描かれて、隊員たちは、卒然と S.W.A.T. 魂に目覚め、一皮むけた S.W.A.T. に成長していかなければならぬのである。裏切り者と裏切らなかった者の分岐点は何なのか? 胸に手をあててよく考えていただきたい、と私は一人ごちたのでした。

 ツッコミどころ満載なのでオススメです。って、もうちょっとで面白くなりそうな、惜しい作品。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-oct-08;

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