28日後...
『トレインスポッティング』ダニー・ボイル新作は、『ザ・ビーチ』原作者アレックス・ガーランドの書き下ろし脚本を得て、「28 日後」の世界を描きます。ババーン!
以下ネタバレ含みます。
28 日後、どんな世界になっていたか? と申しますと、謎の病原体がイギリスを襲って、感染者たちは凶暴になり、非感染者を襲う、という状況。主人公ジムが昏睡から目覚めれば一人ぼっち、ロンドンからは人が消え、何が起こったかわからず、やがて仲間を得て…という筋立ては、先ほど映画化された『ドラゴンヘッド』(飯田穣二監督)と酷似、主人公が情けなくてヘタレなお兄ちゃんという点でも共通しており、絶対『ドラゴンヘッド』をネタにしているに違いない、と一人ごちたのですけど、飯田版『ドラゴンヘッド』に比べ、『シャロウ・グレイブ』『トレインスポッティング』などで「そこらへんにいそうなお兄ちゃん」を描いてきたダニー・ボイルだけあって、キャラ造型のリアルさに格段の差があり、お話も地味に進行して、病原体が猛威を奮うという題材もタイムリー、充分ありえる雰囲気。
この作品、ラストシーンが 2 種類用意されております。『Hello!』と呼びかけても、誰も応えてくれないロンドンの状況は、殺伐とした現実の寓意とも見て取れ、生き残るためには、生き残ることだけ考えて行動しなければならない、果たしてそれでよいのか? いや、それだけでは駄目? みたいな、「殺伐とした世界にも希望を見出すべきか否か?」という問いに結論が出ず、2 種のラストとなったのでございましょうか。
一応のラストを迎えてエンドクレジットが流された後、異なるラストが描かれますけど、2 つ目のラストを見るためには、観客はボケーッとエンドクレジットを眺めなければならない。言い換えれば「映画好き」の方だけが、2 つ目のラストを目にすることができるのである。
一つ目のラストは、ともかく「Hello!」と声をかけてみよう、そういう挨拶が大事なんである、みたいな、小津安二郎も『お早よう』で描いた「深い意味はないけれども挨拶というものは大切ですよ」という教訓を得てほのぼのとした気分になるのですが、エンドクレジットを見続けた「映画好き」の方は、現実の厳しさを目の当たりにするのであった。つまり、ダニー・ボイルは、「映画好き」も度を過ぎると、気持ちよく映画館を出ることができないんですよ、と言いたいわけですね。って違うか。
そんなことはどうでもよくて、後半、舞台が古城に限定されてしまうと途端にごく普通のアクション映画になり、前半の緊張感が消えてしまうのが惜しいです。主人公が唐突に強くなるのもいかがしたものか。ここがキッチリ盛り上がっておれば、すんなり一つのラストで収まったのでは? と思いました。
話としては『オメガマン』(1971 米・チャールトン・ヘストン主演)を彷彿とさせる SF の定番ですが、イギリス映画らしくキャラが類型に収まっていないのがグーでございます。D ・ボイルは、スティーヴン・キングの映画化なんかすると良いんじゃないかしら。ともかく、前半、人間が消失してしまったロンドンの風景が気色よいのでオススメです。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-oct-16;