マトリックス
レボリューションズ
『マトリックス』三部作、いよいよ完結編公開ですよ! ババーン!
以下、ネタバレ含みます。
これまでのあらすじを述べますと、「映画には何も期待しない」が信条の私ですが、一作目が素晴らしく面白かったものですから、ついつい期待を抱いていたのは事実、おかげさまで二作目『リローデッド』に激しく脱力させられ、もはや『マトリックス』シリーズに対する期待は露ほどもない、という心境で鑑賞に臨んだのであった…。ババーン! って、私のことなど誰も聞いてませんね。
結論からいうと、二作目からの話が続くところは「おいおい、またですか?」と RE 脱力したのですが、後半イカ軍団とザイオン一大戦闘シーンに大いに興奮。というか、ネオ、トリニティ、モーフィアスら主要キャラが出ていないシーンの方が圧倒的に面白い、というヘンテコリンなシリーズ完結編、これはこれでなかなか素晴らしい有終の美であった、と私は一人ごちたのでした。シリーズ最終編となれば、主要キャラとの別れが悲しくなるもの、ところがこのシリーズの場合、主要キャラはどうでもいい存在になって、「えっ? キミたち、まだいたの?」って感じのあっさりしたお別れができる、と申しましょうか。
それはともかくこのシリーズ、当初より三部作として構想されていたそうですが、思うに結末が大きく変更されたのではないでしょうか? 1999 年公開の第一作は、「支配のシステムから飛び出して、テロを仕掛けろ!」がテーマで、グローバリズムをうち倒すため、主要キャラのマイノリティ三人組=ハーフ、アフリカ系、ボンデージ女がエージェント・スミス= CIA と死闘を繰り広げるというお話でした。そもそも続編+続々編は、グローバリズムをうち倒し革命が成就するお話にするつもりだった、と思うのです。『レボリューションズ』と、複数形になっているのがミソで、それは世界各地で革命が起こる、世界同時革命になるはずであった。
しかし、2001 年、ハリウッド映画顔負けの「9.11 同時多発テロ」が起こり、ウォシャウスキー兄弟は、無邪気なテロ礼讃ができなくなってしまいます。「自分たちはオタクですから」とマイノリティを気取っても、所詮アメリカ白人、路線変更を余儀なくされ、続編+続々編で「自分たちはテロを礼讃しない」と四苦八苦の弁明に務めているのであります。
そう考えると続編で主要キャラ 3 人がどんどんどうでもいいキャラになり、対してエージェント・スミスの魅力が増した理由がわかってきます。続々編でネオ一派は敵方の「愛」についても語り出し、もはやテロリストの資格なし。一方、コントロールがきかなくなって増殖を続けるエージェント・スミスが、テロリストの役目を担うことになります。「コントロールされない」とは、マトリックスを抜け出すことに他ならず(本当に抜け出しちゃう)、「反グローバリズム」という主題を担う真の主役は、エージェント・スミスに交替されたのであった。
マトリックス(グローバリズム)陣営は、ザイオン(=パレスチナ/アフガン/イラク)に猛烈な空爆を敢行、権力の中枢と交渉チャンネルを得たネオは、「エージェント・スミスを倒せるのは自分だけだ、代わりに平和を!」と取引を申し入れ、見事スミスをうち倒し、ザイオンに平和が訪れ、人々にはマトリックスを抜け出す自由が認められる…って、一作目テロリストたちは、システムの補完物に変質を遂げ、システムはより強固になって目出度し目出度し。
というわけで一作目と、続編+続々編の間には、大きな隔絶があり、というか、「転向」と言ってよく、一作目が面白かったのに、続編+続々編がさっぱり面白くないのも道理でございます。
しかしながら、続編+続々編の変質は、アメリカ帝国が「対テロ戦争」を各地で仕掛ける現在に、娯楽アクションを作るとはどういうことか? が考えられた末の路線変更であります。刺客が権力の中枢にアクセスし、直接対話、「天下の平和」のために命を賭すという『HERO』と同じ話になっちゃった、というのが面白いですね。
そんな妄想はどうでもよくて、ユンボ風モビルスーツに乗って男気を見せるミフネ船長最高! CG 全開ではありますが、イカ軍団襲来シーンは燃える戦闘シーンになっております。て、いうか、ウォシャウスキー兄弟の興味は「イカ軍団 VS ザイオン」の攻防戦をいかに描くかに移ってしまっており、主要キャストが、クライマックスの現場に誰もいないという希有な事態、って、それならそれで、主要キャストを冒頭 5 分で皆殺しにし、2 時間 25 分かけてザイオン攻防戦を丁寧に描いておれば、誰もがアッと驚く完結編になって賛否両論、『スターシップ・トルーパーズ』以来最高の戦争映画になったかも? と思うと残念でございます。
『リローデッド』よりは随分と面白い映画になってますのでオススメです。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-nov-25;