呪怨
「『リング』『仄暗い水の底から』など、ハリウッドが続々とリメイクを発表し、世界が注目する《ジャパニーズ・ホラーの最高傑作》がここに誕生した!」 バババババーン! ということらしいのですが、まず、ハリウッドが続々リメイクを発表するのは喜ばしいことなのでしょうか? と、ふと思ったのであります。ハリウッドの金儲けの方法の一つとして、非英語作品のオモロイ作品を、アメリカ人俳優、英語で作り直す、というのがあり、
- 『赤ちゃんに乾杯!』(85 フランス)→『スリーメン & ベイビー』(87)
- 『ニキータ』(90 フランス)→『アサシン』(93)
- 『モルグ/屍体消失』(94 デンマーク)→『ナイトウォッチ』(98)
- 『不眠症』(97 ノルウェー)→『インソムニア』(02)
- 『オープン・ユア・アイズ』(97 スペイン)→『バニラ・スカイ』(02)
…思いつくだけでも(調べましたが)ザッとこんな感じ、90 年代より増加傾向にあり、ハリウッドでは「英語化リメイク」が金儲けの法則として確立されてきております。キチンとオリジナルに敬意が払われておれば問題はないのですが、例えば「『スリーメン & ベイビー』は『赤ちゃんに乾杯!』のリメイクなんだよ、『赤ちゃんに乾杯!』はバチグンのオススメなのさ!」と申しても、マニアックな戯れ言と受け取られるのがオチ、ハリウッドでリメイクされたとしても、それは単に、金儲けの材料を提供したに過ぎないのであります。『リング』が『ザ・リング』としてリメイクされ、「日本のホラーが認められた!」「快挙」と思われた方もおられるかと存じますが、「皆の衆、喜べ! ハリウッド様にネタを提供できたぞ!」と喜んでいるのと同じ、それは「ハリウッド映画は日本映画より面白い」という偏見に囚われているゾ、とご意見申し上げたい。あ、『呪怨』の英語化リメイクは清水崇監督直々にメガホンを取られるのですか? いや、それは目出度い。快挙ですね。
そんなことはどうでもよくて、やはり、理想のホラーとは、なかなか核心に触れず(私のレビューのように)、ジワジワッと退屈と不安を醸し出し、恐怖を小出しにし、クライマックスで一気に恐怖のつるべ打ち! もう堪忍して! きゃあ! …というもので、さてこの『呪怨』、一つの家にまつわる因縁をクロニクルとして描いており、むしろ短編連作のおもむき、こうなりますと、段々と恐怖にも慣れ親しんで、唐突に出現する“俊雄くん”が、吉田戦車『伝染るんです』の包帯を頭に巻いた少年を彷彿とさせ、足下に俊雄くん出現! 奥菜恵「ひいぃっ!」と悲鳴をあげた刹那、つい爆笑しそうになった、というのは私が恐怖に鈍感でデリカシーのない、恐怖の絶頂に笑ってしまって周囲の観客の顰蹙を買いがちなヤツなだけであって、実のところ『呪怨』は結構恐い。のですが、やはり中田秀夫・黒沢清に比べると、恐怖の持続力という点で物足りないものを感じたのでした。
清水崇監督の前作『富江 re-birth』は、原作伊藤潤二のテイストか、「恐いけど笑える」というか「笑いっぱなし」でしたが、今回は「恐い」の割合高し。なんでも、より低予算で撮られたヴィデオ版『呪怨』『呪怨 2』の方が、実録っぽくて実に恐いらしく、そっちを見てみたい、と思った私に朗報です。2003 年 4 月 4 日に、RCS プレゼンツ“弥生座ナイトムービー”で上映されるとのこと、ホラー好き私は、女房を質に入れても駆けつけねばならぬな、と一人ごちたのでした。
ホラー度 My 評価では、
『震える舌』>『悪魔のいけにえ』>>>『仄暗い水の底から』>『女優霊』>『リング』>映画版『呪怨』>『回路』
…こんな感じです。オススメ。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
(BABA)