刑事まつり
『おかえり』の篠崎誠監督の呼びかけに応え、
壱、主人公は刑事であること!
弐、完成尺は十分を一秒でも超えてはいけない!
参、一分につき最低でも一回ギャグを入れること!
…という掟のもとに、青山真治、高橋洋、黒沢清らが、12 編の短編映画を文化祭ノリで低予算・短期間で作成したのでした。バーン! と、先日も『JAM FILMS』なる映研の上映会みたいな短編作品集を見たばかりというのにだ、どうしてこう身内ノリの映画ばかり作られますかね? ああん? と因縁のひとつもつけたくなりますが、きっちりとルールを設定し、「刑事」という括りを設け、観客を笑わせてナンボ、というスタンスで繰り広げられるギャグの数々に抱腹絶倒! と言いたいのは山々なのですが、ゆるゆるなのは別にいいのですが、テレヴィの深夜番組で若手芸人が繰り広げるコントよりも寒い、というか、あなた、それホントにギャグのつもりですか? と問いつめたくなるほど、ほぼ満員の観客席は水を打ったように静まりかえっている中、大声で笑ってしまったのは私です。
といっても面白かったのは、『リング』のホラー脚本家である高橋洋が監督した『アメリカ刑事』で、英語を日本語化しようとする悪(?)の一味をやっつけるお話、その「英語を日本語化する」というのがツボで、「彼は電話が長い」を英訳して「He is long telephone.」と、言ってみたり、「massacre (大虐殺)」を「マサックレ(名古屋弁のように)」と読ませる、など、やはりホラーな人はギャグの発想もお手の物であるな、ホラーとコメディは紙一重だからな、うむ、とごちました。
次に面白かったのは『発狂する唇』佐々木浩久監督による『だじゃれ刑事』、主演が中原昌也、圧倒的にゆるゆるですが、駄洒落がビシビシきめる、というか、ビシビシはずす中原昌也、最高です。
また、『ユリイカ』の青山真治監督による『No といえる刑事』も、こんな役でも一生懸命な寺島進が涙を誘います。寺島進が出演しているだけで見事に「映画っぽさ」が画面に充満するのは、映画俳優の底力を思い知りました。
ラストの『忘れられない刑事』は、呼びかけ人の篠崎誠監督によるもので、全編を通じもっとも力が入り、短編としての完成度も高いのですが、如何せん「○○刑事」が大挙として出演するギャグは、マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』や『へなちょこ大作戦 Z』の二番煎じの感あり。
えーっと、後、丹下佐膳にオマージュを捧げる『特殊刑事』も面白かった。と、いくつか笑わせていただきましたが、チイとも面白くなくて観客席を絶対零度にまで冷やす短編も含まれ、文化祭ノリ、身内ノリなので、やはりミニシアター系の日本映画を常日頃追いかけてて、「この監督たちは、身内みたいなもんですからねー」と軽くうそぶける電波な気分な方にオススメです。なんだかんだと申しましても現役映画関係者の方々がこういう形で競作して切磋琢磨、交流、親睦を深めるというのも、日本映画の未来にとってはよろしいんじゃないかと。
☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
(BABA)