マイノリティ・
レポート
近頃パッとしない(そんなことない?)スピルバーグの最新作は、フィリップ・K・ディックの短編の映画化。
2054 年近未来。ワシントン DC では、“犯罪予防局”が設置されております。“プリコグ”と呼ばれる予知能力者が予知を行い、犯人と被害者の名前、犯行現場のイメージを元に、捜査官トム・クルーズが、実際の現場を突き止めて急行し、犯人(予定)が殺人を犯す前に逮捕する、というシステムです。ところがある日、トム・クルーズ自身が殺人を犯すイメージがモニターされてさあ大変。「なんでこんな見ず知らずの男を殺さなあかんねん!」…トム・クルーズは「誰でも逃げるで!」と逃走、果たして、トム・クルーズは本当に殺人を起こしてしまうのでしょうかね? ババーン! …ってどうでもいいですか?
題名の「マイノリティ・レポート(少数報告)」とは何か? 映画ではよくわかりませんです。原作を読んでみると、予知は三人の予知能力者(プリコグ)によって行われ、三人の内の二人が一致した予知が採用される。一人しか見なかった予知は「マイノリティ・レポート」として却下される、ということですねん。原作短編では題名がオチに関係しているのですけど、映画はそのへんを改編しており、何だかよくわかりませんねー。
それはともかく、街のアチコチにセンサーが設置され、網膜パターンが身分証明書代わりに使われている、という未来予想が面白いんですけど、トム・クルーズが犯罪(予定)者として指名手配されても、なぜ彼の網膜は、いつまでたっても犯罪予防局内部にフリーパスなのか? という脚本上の大穴がポッカリ開いてしまいました。なんで誰も気づかないのだ? うーむ。
さらに原作では、「未来予知システムは間違わない」という前提は揺るがないのですけど、映画では「未来予知システムに欠陥がある」という設定です。うーむ、それでは「テロを未然に防ぐ」として、がんがんアラブ人を逮捕している(らしい)アメリカ政府の方針を批判していると取られてしまうぞ、大丈夫かスピルバーグ。と余計な心配。っていうか、殺人事件をゼロに抑え込む犯罪予防システムって結構いいと思うんですけどね。私は。自分が犯罪予定者として逮捕されてしまうリスクと、殺人をゼロに抑え込むことを天秤にかけてみれば、殺人ゼロ社会の方が良いと思いませんか?
ツッコミどころ満載、ということは「なかなか面白かった!」ということです。こんなアホアホ映画に莫大な製作費・人材をつぎこんで作ってしまうスピルバーグって…と、壮大な無駄に呆れ返りましたが、凝った CG を使った高そうなシーンよりも、安めの、頭を絞った逃避行シーンの方がよっぽど面白い、まだまだスピルバーグにも期待が持てますね、って感じ。ちゅうてもこんな話で 2 時間超は長すぎ、せめて上映時間 100 分以内にまとめていただければ幸いです。近年のスピルバーグ作品では随分とマシなのでオススメでーす。
☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-Nov-29;