阿弥陀堂だより
『雨あがる』のスタッフが再び結集。公式サイトの解説文によると、『雨あがる』は「日本アカデミー賞で、11 部門の優秀賞を受賞、作品を含む主要 8 部門で最優秀賞を獲得」とあります。ところで、「日本アカデミー賞」には一体どのような権威があるのでしょうか?
それはともかく。そもそも「黒澤明好き」の私ですが、黒澤脚本による『雨あがる』は、余り好きではないのでした。「人を斬った後で、『ごめんなさいごめんなさい』と謝罪する剣豪」が偽善的に感じられたのです。「そんなヤツぁおらんやろ」と思ったものです。
今回もちょっと困ってしまいました。「都会で、精神を病んだ医者(樋口可南子)が、夫(寺尾聡)の故郷・長野県の田舎暮らしで、癒されていく」という、文字通り「癒し系」映画なんですけど、果たしてこの映画で癒されるのはどんな方なのか。
と、いうか、この「田舎で癒されること」の描き方が、表面的ではないか? と田舎者私は思うのです。宮崎駿監督の 1988 年作『となりのトトロ』に比べても浅いのでは。『となりのトトロ』では、自然と人工の境界世界としての農村が描かれ、人間は人智を超越したものを「妖怪」として具象化してこそバランスよく生きられることが描かれていました(のか?)。この『阿弥陀堂だより』はどうか? 「田舎ってノンビリできるねー」「癒されるわー」「渓流釣りを趣味にしようかしら?」…って、ディスカバー・ジャパンですか?
なんといっても彼ら夫婦は、田舎に引っ越せるご身分ですからね。高給保証/週 3 日午前中だけ働けばよい医者と、有閑自由業/小説家の夫婦だからこそ、田舎でノンビリできるのでは。村に壮年者があまりいないのは、農業だけでは暮らしていけないからで、貧乏人は田舎でノンビリしているヒマはないのである。
ともかく、登場する子供たちも「夕焼け小焼けで日が暮れてー」を唄いながら家路につく、という恐るべきロマンチックさ。頭に懐中電灯をくくりつけ、猟銃と日本刀を持った山崎努が現れやしないかドキドキでした。
とはいえ、阿弥陀堂守の老婆・北林谷栄の演技なのかマジなのかよくわからない演技が凄いのでオススメです。
☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-Nov-05;