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Sports Review 2002・5月29日(WED.)

少林サッカー(字幕版)

 クエンティン・タランティーノがこの映画を評して曰く「ぶっちぎりに凄い映画だ!」。私も言わせていただきます。ぶっちぎりに凄い映画だ!

 このぶっちぎりの凄さの前には、ただ「見てください。お願いします」とつぶやくしかないのですが、『少林サッカー』は日本の少年マンガに絶大な影響を受けていることを指摘しておきたい。「瞳にボッと炎が燃え上がる」のは『巨人の星』、むちゃくちゃなワザの応酬が行われるのは『アストロ球団』…という具合に、日本の少年マンガで開発され、発展させられてきた表現手法の数々が、見事に映画表現に移し替えられているのですね。

 ストーリーにもマンガの影響が見受けられます。かつては名選手だったが今は自尊心を失ってしまったオッサンが、街で偶然ぶっちぎりに凄い才能の持ち主に出会う、というのはさながら『あしたのジョー』で、ン・マンタが丹下段平に見えて仕方がない。また、本当は美人なのに自信がないためひっそり生きている少女というのも日本マンガで何度も何度も繰り返されたパターンです。甘くない饅頭は…『庖丁人味平』やんけ!

 私がタイに行ったとき、『スラムダンク』『よろしくメカドック』などがタイ語に翻訳され書店に山積みになっているのに驚いたもので、香港の状況は定かではないのですが、東南アジアで日本の少年マンガは絶大な人気を博しているようです。きっと『少林サッカー』の監督/主演のチャウ・シンチーも日本のマンガが大好きに違いない。…と思っていたら、「映画秘宝」のインタビューでチャウ・シンチーはマンガ、中でも『破壊王ノリタカ』(少年マガジンに連載していた格闘マンガ)が好きと語っておられました。なるほど、と私はポンと膝を打ったものですよ。

 日本のマンガの水準は量・質とも世界最高峰である、堂々と世界に誇るべきである、と私は常々思っているのですが、同じアジアから日本のマンガの豊かな表現手法を援用してぶっち切りに凄い映画が生まれたことに私は大いに感銘を受けたのでした。ブルース・リー+日本マンガ=これ最強。映画史の新たな展開です。

 日本においても、マンガのマンガ的な映画化には傑作が多く(脱力作も多いですが)、マンガの映画化でなくとも『シャ乱 Q 演歌の花道』はマンガ的表現を積極的に取り入れて傑作となっているわけで、日本映画はもっとマンガの映画化、マンガ表現の導入に積極的にならねばならぬ。マンガによって、アメリカ/フランスの文化侵略と戦うことが出来る、ムフー、と私は鼻息を荒くしたのでした。

 そんなことはどうでもよく、何度でも見るべし。テレヴィ、予告編でおいしいシーンがボロボロ露出しておりますが、そこはグッと目をつぶって真っさらな状態でご覧ください。

 本来あるべき NG 集がなかったのが唯一の不満。残念。NG 集がつくであろう日本版 DVD が出たら即買いのぶっちぎりのオススメです。

☆☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-May-29;

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