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 Movie Review 2002・5月26日(SUN.)

パニック・ルーム

公式サイト: http://www.panicroom.jp/

 傑作『ファイト・クラブ』のデビッド・フィンチャー監督最新作は、密室劇風サスペンス。離婚したばかりのジョディ・フォスターとその娘サラは、ニューヨークのさる富豪が遺した物件にお引っ越し。その屋敷は、強盗に侵入されたときに逃げ込む「パニック・ルーム」(鉄の壁に囲まれ外部から侵入不可能、外部モニター、別回線の電話装備)付きのお買い得物件だった! ダダーン!

 さて引っ越し初日、いきなり 3 人組の強盗が侵入、ジョディとその娘サラはこれ幸いとさっそくパニック・ルームに逃げ込みます。しかし、パニックルーム内の電話はまだ不通で外部と連絡が取れない。しかも強盗が狙うお宝はパニックルーム内部にある。パニック・ルームから逃げ出したいけど逃げられない、一方、強盗にすれば、母娘をパニックルームから出したいけれど出せない、母娘と強盗の丁々発止の闘いが始まる! …という、ちょっと『ホーム・アローン』風のお話。

 脚本は、『ジュラシック・パーク』や最近では『スパイダーマン』も担当しているデビッド・コープ。舞台劇風の限定された空間で展開するまあまあタイトな脚本です。デビッド・フィンチャーここぞ腕の見せ所とばかりに、「そこまで凝る必要あるんか? 金使いたいだけとちゃうんか?」と問いつめたいカメラワークで映像化。ニューヨークの摩天楼にクレジットが浮かぶオープニングタイトルはバチグンのカッコ良さですけど。

 さて強盗 3 人組とは、ブルジョアジーから富を奪取せんとする労働者、すなわちこの映画は階級闘争の寓意になっております。貧困白人はメチャ頭が悪かったり後先考えず凶暴だったりして、彼らだけでは階級闘争に勝利することは不可能。闘争の正否を握るのは、黒人なんですね。黒人フォレスト・ウィテカーは沈着冷静に闘争をリードします。しかし心優しい彼には激烈な闘争を戦い抜くのは無理で、情けをかけたために富の奪取に失敗します。

 逆に、資本家からすれば、黒人を懐柔しておけば富・権力の安泰が保障される、というわけなんですね。今年発表された米アカデミー賞で主演男優賞をデンゼル・ワシントン、主演女優賞をハル・ベリーが受賞、シドニー・ポワチエが名誉賞、ついでにウーピー・ゴールドバーグが司会、と黒人に大サービスだったのは、アメリカ支配層の戦略が見え見えなんですけど、この『パニック・ルーム』はアメリカ階級闘争の現局面の見事なメタファーとなっているのである。もちろん適当。

 ともかく、ボチボチとスリル・サスペンスもあり、そこそこきっちり伏線を拾っていく話なんでオススメ。フィンチャー監督作としては、『ゲーム』『セブン』よりマシ、『ファイト・クラブ』には及ばず、ってところでしょうか。

☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-May-26;

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