アトランティスのこころ
スティーブン・キング原作。キングといえば身代金…じゃなくって、『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』など、ほのぼの路線の映画化にいくつか傑作があり、爆笑巨編『ミザリー』も面白ございましたね。キングの映画化は超常現象が少ない方が傑作になりやすいようです。なぜか? 乱暴な論は承知ですけど、超常現象濃厚な原作は、作り手がその現象を描くのに腐心してしまい、肝心のキャラが立たないからではないか? …どないでしょ。
さて『アトランティスのこころ』も、ほのぼの+超常現象が少ない話の傑作です。
幼なじみの訃報が届き、約 40 年ぶりに故郷へ帰ったデビッド・モース(『グリーンマイル』)が、11 歳の頃をしみじみと回想する、ちょっと『スタンド・バイ・ミー』と似ており、少年がジジイと交友を結ぶという点で『ゴールデン・ボーイ』にも似ており、と、新鮮みに欠けますけど、キングの脚色では『ミザリー』の実績を持つウィリアム・ゴールドマン、監督は『シャイン』のスコット・ヒックス、撮影は、『トリコロール/赤の愛』『デカローグ』でクシシュトフ・キェシロフスキとコンビを組んだピョートル・ソボシンスキ、…てな具合に一流どころが揃っており、ツボを心得た映画化になっております。
ことに、ウィリアム・ゴールドマン! よく知りませんか? 最近では『将軍の娘エリザベス・キャンベル』『ゴースト・アンド・ダークネス』などイマイチな作品も担当しておりますがそのフィルモグラフィをさかのぼると…
- 『プリンセス・ブライド・ストーリー』(1987 ロブ・ライナー監督)
- 『マジック』(1978 リチャード・アッテンボロー監督)
- 『マラソン・マン』(1976 ジョン・シュレシンジャー監督)
- 『ホット・ロック』(1972 ピーター・イエーツ監督)
- 『動く標的』(1966 ジャック・スマイト監督)
…どうです? ワクワクする傑作の数々。今回の『アトランティスのこころ』も、ソツなく盛り上げどころを心得た脚本、素晴らしいです。話の発端となった幼なじみの少年がどうでもいい扱いになってるとか。
で、この映画は「千里眼」というか、「予知能力」みたいな超常現象が登場しますが、それは「少年の回想」の中だけであり、いかにも「妄想」のごとく描かれているのですね。事実は、アンソニー・ホプキンスに性的イタズラを受けた少年が記憶を捏造しているに違いない、と思わせる雰囲気です。え? そんなこと考えてるのはお前だけやて? 失礼しました。それはともかく、「超常現象度少ないキングの映画化は成功する」とのテーゼが今回も裏付けられたのではないでしょうか。あ、『ゴールデン・ボーイ』は超常現象なしですけどつまらなかったですね。監督がブライアン・シンガー(『ユージュアル・サスペクツ』)だからしょうがないか。どうでもいいですか。
地味な話だし、主演の男の子もあんまり可愛くないですけど、結構な感動作に仕上がっております。プロの仕事。バチグンのオススメです。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2002-May-23;