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 Movie Review 2002・5月22日(WED.)

フィスト・オブ・フューリー
〜復活! ドラゴン怒りの鉄拳〜

 がーん。凄い映画を見てしまいました。アジア映画史に燦然と輝くブルース・リーの最高傑作『ドラゴン怒りの鉄拳』。ブルース・リーが演じた陳真(チェン・チェン)は死んじゃあいなかった! 30 年の時を経て、チェン・チェンが再び日本人をボコボコに叩きのめす!

 まず、原色の背景にクンフーアクションのシルエットが躍動するタイトルバックからして『007』シリーズを彷彿とさせ……安い…安過ぎる…。シンセサイザーの音楽も安い感じです。意味なくチャイナ服のお姉ちゃんも出てくるし。おまけに字幕はすべて日本語です。「日本版主題歌:角田信朗 & ドラゴン・エンジェル」。何と日本オリジナルのタイトルバックです。贅沢ですね。

 やっと、中国語の本物のタイトルが始まると…遠目にはブルース・リーに似てなくもない、アップになると堤真一そっくりの石天龍(セキ・テンリュウ)が、約 50 人ほどの日本人をバッタバッタとなぎ倒す! 場面変わると、セキ・テンリュウは白ズボンにお約束の上半身裸、今度はヌンチャクで日本人をボコボコに。あれ、さっきまでズボンは黒かったのに…ズボン履き替えたみたいです。

 さて、20 世紀初頭の上海…、あれ? 日本人 50 人との対決は何? …何でもなかったようです。ここで私の頭の中で、ポスターに大書されたコピーの言葉が響いたのでした。

「考えるな! 感じろ!」

 …そう、この映画は感じる映画だったのです。

 やっとドラマが始まりました。日本など列強が横暴を振るう上海にあって、民族主義的なクンフー道場「精武門」。警官隊が、中国人門下生と対峙しております。1972 年『ドラゴン怒りの鉄拳』のラスト直前ですね。

「チェン・チェンをかくまってるな! キリキリ差し出せ!」と日本人が喚いているとですね、「ほあちゃああぁぁぁぁ!」と窓をぶち壊しセキ・テンリュウ登場! あははははははは。最高です。考えるな! 感じろ!

 とある策略でその場をしのいだセキ・テンリュウ、故郷の雲南省へ逃れ、盲目の按摩さんに変装し、妹弟子(シンシア・カーン)と身を隠します。黒眼鏡のセキ・テンリュウ、見事な変装です。

 それから色々あってですね(寝てた)、追っ手の日本人に妹弟子がなぶり殺され、ぶち切れたセキ・テンリュウは日本人武道家と死闘を繰り広げます。ダダーン!

 セキ・テンリュウと日本人武道家二人、1 対 2 の対決になりかけると、日本人武道家が言います。「ふふふ。日本人はそんな卑怯なマネはしない。一人づつお相手しよう」……。お前ら、二人がかりで妹弟子をいたぶったんと違うんか! …おっと、考えてしまいました。Don't Think! Feel!

 ブルース・リーになりきってクンフーアクションを展開するセキ・テンリュウですが、パンフレット(700 円もします)によると、なんと北京警察特殊部隊出身。ブルース・リーが創設したジークンドーを映画から(!)独学でマスター、夢の中でブルース・リーの指導を受け(!!)「中国国際ジークンドー連盟」を設立、弟子は 20 万名に及ぶそうです。……みんな一生懸命ブルース・リーのモノマネしてるんでしょうかね。

 しかし、セキ・テンリュウ卑怯ちゃうか? 形勢不利と見るや、壷をたたき割って地面に破片をまき散らし、足袋をはいた日本人の動きを封じるとか。掴みワザが得意な武道家との対決では、こっそり腕に油を塗ったりとか。

 ブルース・リー勝利の法則によれば、ここは「復讐心、しがらみを忘れ、自分の戦闘スタイルを取り戻して勝つ」すなわちまず己に勝たねばならぬ。そういうプロセスを経ず、日本人は正々堂々と闘っているのにトンチで勝っていいんでしょうか。お前、ホンマにジークンドーわかっているのかと小一時間問いつめたい。

 ともかく中国では、上映禁止だったブルース・リー映画が 80 年代より公開され、ブルース・リーの大ブームが起こっているそうです。『怒りの鉄拳』は反日プロパガンダの傑作ですが、再びブルース・リーになりきった一人の男によって、反日のメッセージもそのままに見事に蘇りました。もうね、日本人には相撲取りもいてね、四股をふんだりするんですよ。で、時々「こにちは!」「トクホン」「ばかやろ」など妙な日本語も混じったりするんですよ。いつの時代の映画やねん! というか、30 年経っても中国人の日本人認識はまったく変わっていないのか? それともクンフー映画マニアが当時の忠実なる再現をめざしたのか? 考えるな! 感じろ!

 うーんと、『北京原人 Who Are You?』なんかが好きな方にバチグンのオススメ。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-May-22;

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