Movie Review 10月14日(SUN.)
ラッシュ・アワー 2」
鼎談 PART I
- サイト管理人
- 今世紀最大の話題作にしてオパール・サイトの超オススメ作『ラッシュ・アワー 2』が公開され、圧倒的な感動を広げております。本日は、オパール店主ことオガケン氏、常連投稿人 BABA 氏、町の映画評判家ヤマネ氏に、『ラッシュ・アワー 2』の魅力と世界史に与えるインパクトについて存分に語っていただきます。ちなみにばんばんネタバレしますので、未見の方は一刻も早く見てから読んでくださいませ。では、どうぞよろしく。
- ヤマネ
- ども。映画評論家の山根貞男氏とは、チョッとだけ話したことがあるヤマネです。『ラッシュ・アワー 2』素晴らしかったですね! 随分前に見たので、忘れちゃいましたが。
- BABA
- ども。いやホント、素晴らしかった! チャン・ツィイーが出てたとこしか憶えてませんが。
- 管理人
- ……。比較的、最近見られたオガケンさんはいかがでしたか?
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最良のアンチ・グローバリズム映画
- オガケン
- 私は、『ラッシュ・アワー 2』は今日の世界情勢を的確に反映した、最良の「アンチ・グローバリズム映画」だと思います。
- 管理人
- ……。簡単に内容を説明させていただきますと、前作で仲良くなったカンフーの達人ジャッキー・チェンと大口叩きの黒人クリス・タッカーが、爆弾テロの犯人を追って、香港、ラス・ヴェガスで大活躍、というものです。
- オガケン
- これはアジア人と黒人が協力しあって、白人=グローバリストの野望を挫く、という反グローバリズム映画なんですね。日本人と黒人が協力する『BROTHER』と同時代的な主張がこめられているわけです。黒人クリス・タッカーの、「犯罪があったら儲けている金持ち白人を捜せ! それが捜査の鉄則だ!」など、我々が反グローバリズム闘争を進めるにあたって指針とすべき台詞が満載です。
- BABA
- なるほど。ジャッキーとクリス・タッカーはラス・ヴェガスのカジノを舞台にした偽札造りの陰謀を突き止めるわけだが、ここでの「カジノ」は、アメリカ主導で進められる賭博的・投機的な金融経済の暗喩で、偽札造りは、ドルショック以降ドルを大増刷しているアメリカ財務省を皮肉っているわけだな。適当。
- 管理人
- ……。そうなんですかねー?
- オガケン
- そうなんです。アジア人は黒人と手を組まなければならないのです。金持ち白人どもは、非白人を手足のように使って、陰謀を巡らせていたのですが、白人の手先が暴走を始め、ビル爆破というテロリズムに走る、という筋立ては、まさしく今日のアメリカ同時多発テロを予言したと言えるでしょう。自然は芸術を模倣するのです。今、アメリカが直面するブローバック(自業自得)現象を見事に描いた作品なのです。
- ヤマネ
- アジア人と白人がコンビを組む『シャンハイ・ヌーン』は詰まらなかったですねー。
- オガケン
- アジア人と白人が組むのは融和主義(Consolidationism)にすぎないのです。やはりマイノリティー同士が手を組まなくては。この映画は、だからマルコム X の提唱した人種分離主義 (Segregationism) に近い立場をとっている訳です。ちなみにマルコム X はイスラム教徒。この事からも、この映画の包摂する思想の深さが分かるでしょう。
- 管理人
- ……。はあ。うーむうーむ。…それはそうとして、『初恋の来た道』『グリーン・デスティニー』でも好演のチャン・ツィイー、本格的ハリウッド進出ですが、いかがでしたか? …と話題を変える。
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チャン・ツィイー最高!
- ヤマネ
- 最初、脚本段階では、悪役は二人だったんですが、チャン・ツィイーがあんまり素晴らしいんで、一人にまとめてチャン・ツィイーの出演シーンを増やしたらしいですね。
- BABA
- 増やしたと言っても、物足りないことこの上なしだ。もう、チャン・ツィイー主演でないとダメだな。ジャッキーとクリス・タッカーはいなくていいね。
- 管理人
- ……。それじゃあ『ラッシュ・アワー』の続編にならないんですけど…。
- BABA
- まあ、最初は香港にやってくる二人で始めてもいいんだけど、すぐチャン・ツィイーに殺されて、後は、チャン・ツィイーが大活躍! やあやあ、これは面白そうだ。
- 管理人
- ……。勝手に妄想を膨らませておいてください。オガケンさんは?
- オガケン
- クライマックスはクリス・タッカーと闘うわけですが、そこでのチャン・ツィイーはメチャクチャ素晴らしかったですね。180°開脚、そのまま飛び上がって、横に置いてある槍を蹴り上げ空中で手にとって…などの一連のアクションは、ノーザン・ダンスの参考になります。ダンスマニアも必見ですね。
- ヤマネ
- チャン・ツィイーは、本当はアクション苦手だったみたいですね。『グリーン・デスティニー』の DVD に入っているメイキングを見ていると、結構吹き替えを使っていましたが、今回はかなり頑張ってましたね。でも設定が良くないですよ。ジャッキーとほとんど闘わないのは勿体無い! 大体、カンフーの達人でもなんでもないクリス・タッカーに負けるのが許せない。
- BABA
- 確かに。クリス・タッカーは 0.5 秒で殺されないといけない。
- ヤマネ
- クリス・タッカーはダメですね。カメオ出演のドン・チードルと交代すべきでしたね。
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ドン・チードルも最高!
- BABA
- 『ミッション・トゥー・マース』『トラフィック』などでメキメキ売り出し中のドン・チードルが、中華料理屋をやってる変な黒人でいきなり出てくるのでビックリする。
- オガケン
- あそこは面白かったですね。ジャッキーと兄弟弟子だった、という設定だから、ドン・チードルだったらチャン・ツィイーと互角に闘ってもおかしくない。
- BABA
- でも、この映画は白人グローバリストとの闘いを準備する映画なんだ。アジア人と中国人がお互いの文化の差異は差異として尊重しつつ、共闘の作法を模索しているんだな。だから、最初から黒人がクンフーの達人だと、『ラッシュ・アワー』シリーズの意義が薄れてしまう。だから、ここはウソ臭くともクリス・タッカーでないと。もうひと工夫欲しかったけど。
- オガケン
- なるほどなるほど。ところで私は、アジア人と黒人は何において結びつくかというと、魂(SOUL)だと思うんですよ。それをこの映画は見事に描いていて、我が意を得たり、とハタと膝を打ちました。
つづく >> PART II