ブリジット・
ジョーンズの日記
某出版社広告部勤務のブリジット・ジョーンズは、上司といい仲になったはいいが、この上司がなんせヒュー・グラントなものですからほいほい浮気されてしまい、彼女は「最早この上司の下で働いてはおれぬ」と辞職を決意。引き止めるヒュー・グラントに向かって決然と、公衆の面前で言い放ちます。
「あんたの下で働くくらいだったら、サダム・フセインのお尻を拭いてる方がマシよ!!」
…うーむ。確かに、サダム・フセイン氏は西側の敵ナンバー・ワンとはいえ(ビンラディン氏がクローズアップされるまでは)、この台詞はいかがなものか。気の効いた痛烈な台詞のつもりなのでしょうが、「独裁者サダム・フセイン」イメージは多分にアメリカによって捏造されており、所によっては「サダムのお尻を拭く」ことは、何にもまして名誉なことだったりするのではないでしょうか? 知らん。
この、滑り気味の決め台詞に代表されるように、ブリジットは、自分が知的でウィットがあると周囲に思わせようと常に努力しており、重症の“恋愛したい病= Lovesick”にかかっている、自意識過剰、痛めの女性です。出版社を辞めたと思ったら次はテレビ局に就職てな具合に「業界」で働きたがり、強度の「知ったかぶり」ぶりをブリブリと発揮します。
こういう女性を「可愛い」とか、「共感できる」とか思う方もおられましょうが、誰もが好感を持つキャラクターではないゾ、中にはムカムカ、ムカつく方もおられるのではないでしょうか? それは私。
「マーク・ダーシー(コリン・ファース)のセーターのセンスを云々する資格が貴女にあるのですか? というか、トナカイ柄のセーターはクールだと思うぞ」と、私はそっと暗闇で呟いてみたのでした。ところで私にブリジットのセンスを云々する資格があるか? ないでした。失礼しました。
製作者+脚本家(一部)は、ヒュー・グラント主演の傑作『フォー・ウィディング』『ノッティングヒルの恋人』のチームで語り口は快調、レニー・ゼルウィガーを巡るヒュー・グラントとコリン・ファースがアレコレするロマンチック・コメディとすればなかなか泣かせるシーンもあってオススメなんですが、ところどころに散りばめられたと思しき原作のエッセンスが妙になまなましくかつ痛いのです。ロマンチック・コメディを得意とする製作者+脚本家チームが、リアリティ/生活感溢れまくりの原作を選んだのは如何なものか? 甘さ控えめケーキを作ろうとして唐辛子を加えてしまったかのような味になってしまったのではないでしょうか。原作を読んでいないので適当。
パニッシュ・バッド・シネマと呟きたいところですが、主演三人のバチグンの好演で救われております。特に、(人によっては)かくも痛いブリジットなのですが、演じるのが超級の傑作『ザ・エージェント』『母の眠り』『二人の男と一人の女』のレニー・ゼルウィガー、話によると 6 キロ増量し、チャキチャキのテキサスっ娘がイギリス弁を猛特訓して世界的ベストセラーの映画化に出演したとあっては応援せざるを得ません。映画における俳優の役割は絶大であります。がんばれレニー。フレー。ということでオススメ。
BABA Original: 2001-Jan-11;