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Movie Review 11月25日(TUE.)

スウィート・
 ノベンバー

 ネルソン(キアヌ・リーブス)は広告代理店勤務、数々の広告賞に輝くアート・ディレクター。生き馬の目を抜く広告業界で揉まれに揉まれ、時間に追われる余裕のない日常。そんな彼の前に突如現れた自由奔放に生きるサラ(シャーリーズ・セロン)

 サラはほぼ初対面で言います。「あなたを私の、11 月だけの恋人にしてあげる。」…。うおー、何コイツ? さてはキティガイ? と疑念を抱きつつも、そこそこ美人なのでネルソンも満更でもない様子。

 サラはさらに言います(洒落ではない)。「1 か月間、期間限定で一緒に暮らしましょう。私、問題を抱えた男性を救う特殊能力があるの。」…。うーむ、ますます危ない! 宗教のお誘い? しかしネルソン、正常な判断力もマヒさせていたのかどういうわけか、奇妙な同居生活が始まって…というお話。

 1968 年製作の『今宵かぎりの恋』(未見)、あまり有名でない作品のリメイクです。当時は、仕事一筋、体制に組み込まれたヴァリヴァリの企業戦士とヒッピー(フラワー・チルドレン?)の間の恋という感じで、きっと「体制擁護エリートサラリーマンに対する、ドロップアウトのお誘い」という反体制な主張を持つ映画だったのだろうと勝手に推測。しかし、それを現代に翻案する過程でどうも工夫が足りなかったようで、「ああ、なるほど昔の映画のリメイクなのね、通りで古くさい話だナー」との印象なのですね。

 と、いうかリストラの嵐吹き荒れ完全失業率 5 %を超える(日本)昨今、キアヌのようなドロップアウト退職者は体制側にすれば大歓迎なわけで、反体制テーマが 30 年経って体制側のテーマに変質した、というのが面白い。いや、面白くないけど。

 そんなことはどうでもよく、広告業とは今やどうでもいい業種の一つになってしまっているのでは? 『広告は私たちに微笑みかける死体』なんて本もあったように、「広告? お前はもう死んでいる」…なんですね。わざわざシャリーズ・セロンが癒さずとも、広告マン諸君は「あーもーこんな仕事アホらしゅうてやっとられん」と勝手に気付き、マイホームパパに卒然と変貌したり、ロードレーサーを買ってツーリングに出かけたり、と人生を謳歌されているのではないでしょうか? 知らん。

「広告業なんて、金をもらって媚びを売る娼婦みたいなもの」…なーんてことを言うと娼婦の方々にも失礼、そんな仕事に熱中しているボンヤリさんを、『ビルとテッドの大冒険』などボンクラを演じさせたら世界一のキアヌ・リーヴスが演じており、見事なはまり役、どこから見ても広告マン! …なんですが、逆に後半、平凡ノンビリ人生の意味に目覚めていくのが嘘くさくてしょうがありません。どうでもいいですが。

 シャーリーズ・セロンがちょっと泣ける感じなのでオススメではあります。閉館間近の SY 松竹京映で見たら、画面中央がピンボケで、やれやれと肩をすくめましたが、現在は MOVIX 京都で上映中ですので、ぜひクリアな画面とドルビーデジタルサウンドでお楽しみください。

BABA Original: 2001-Nov-25;

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