ハリー・ポッター
と賢者の石
孤児ハリー少年、魔法学校に入学してアレコレ、と、ワクワクものの題材ですが、さすが『ホーム・アローン』『ミセス・ダウト』の監督クリス・コロンバス、ドリームワークス作品か?! と見まごうばかりの脱力超大作に仕上がりました(ワーナー製作)。いや、イギリスに大々的ロケを敢行、名匠ジョン・シール(『イングリッシュ・ペイシェント』など)の撮影もよろしく、美術もたいそう凄いんですけど。ILM の特撮は『スターウォーズ エピソード I』みたいでまたもや寒いんですがー。
同じスタッフ・キャストですでに製作開始されている続編への配慮もあってか、原作に極力忠実に映画化されているそうで。と、いうわけかどういうわけか、原作の名場面集の雰囲気(読んでないけど)、タメ無く一本調子の演出を 2 時間 32 分たっぷり堪能、クライマックス「賢者の石」探しはさながら『グーニーズ』(クリス・コロンバス脚本)、猛烈な「どうでもいい感」に打ち震えたのでした。
そんなことよりハリー少年はセレブリティ魔術師の息子、親の遺産がガッポリ、魔法学校では「アレがポッターの息子やで」と噂される有名人です。さらには魔法の素質にも恵まれ、と、主人公のくせに結構嫌なヤツなんですね。
さてホウキにまたがっての初の飛行訓練授業シーン、先生は「勝手に飛んだら退学ぞ!」と言明して退出、しかしてハリー、ライバルの安い挑発に乗って勝手に飛行。案の定先生に見つかるも、なーんとお咎めまったく無し! それどころかその素人離れした飛行っぷりが認められ「クィディッチ」というよくわからない試合の選手に選抜され大活躍したり。なんじゃそりゃ。うーむ、これってモノ凄いエコヒイキじゃないですか。校長までヒイキの引き倒しですわ。
ハリー少年が勇気と友情を発揮して学園を救うというストーリーなんですけど、つまるところ「やっぱり生まれが大事でしょう」「金持ちとケンカすな」との教訓、さすがイギリス階級社会! ファンタジーもチビシイ! …と私は卒然と感動したのでした…って何か腹立つ。いやファンタジーとはそういうもんか知らんけど。
そんなことはどうでもよく、キャラがイマイチ立たず、伏線もなく、主人公がアレコレ悩むこともなし。これぞ大ヒット映画の条件なり。子供が主人公の場合、徹底的に不幸な目に会わねばならないのですが(ホンマか?)、主人公ハリーが余りにも恵まれていて陰影がないんですな。どちらかというと観客は憎たらしくもマヌケなライバルキャラ、ドラコ君を応援してしまうのではないでしょうか。こんなことでいいのかハリー? もっと子供らしく邪悪さを発揮しないとダメだぞ。もっと狡く! 汚く! 続編は『ダーティ・ハリー・ポッターと秘密の部屋』でお願いします。あ、すいません。
ともかくジョン・ハート、イアン・ハート(『バック・ビート』ジョン・レノンのそっくりさん)、リチャード・ハリス、マギー・スミスなど英国の名優大挙出演、アラン・リックマンとか結構笑えるし、どうやら私以外の世界中で面白がられているのでオススメです。原作読んでから見た方が面白いかも? 知らん。
BABA Original: 2001-Dec-06;