ヤング・ブラッド
かつては『破壊!』『カプリコン 1』と、アクション映画好きの心を鷲掴みにする快作を連発したピーター・ハイアムズ監督。最近どうもパッとしません。昨年はとうとう『エンド・オブ・デイズ』という超級の底抜け超大作を作ってしまったり。
今回、香港からアクション監督シャン・シンシンを招いてアレクサンドル・デュマの『三銃士』を映画化。『ヤング・ブラッド』とはさっぱり判らない邦題ですが、原題は“The Musketeer”―「銃士」のことですな。『マトリックス』のユエン・ウーピン(袁和平)以来、アメリカでは香港アクションブームだし、ストーリーは何度も映画化されてるくらいなので面白いはずだし、こりゃアクションファンも思わずうなる出来になるはず! と頑張ってみたのですが、どうにもこうにもつまんない映画になってしまいました。
確かに、ジャッキー・チェンアクション的な、場の状況を生かした無理矢理なアクションは、やたら爆発するばかりのアメリカン・アクションと一線を画してはいるのですが、撮り方・編集がダメです。結構凄いことをやっているのに、カットをばんばん割っては、面白みが激減、というかゼロです。時間ばかりがいたずらに流れる。
『エンド・オブ・デイズ』同様、ハイアムズ監督自身が撮影監督も兼ねており、ヨーロッパが舞台だからかフェルメール調の影が多いライティングです。でも、超絶アクションにムーディーな画面作りは不要、ってかいらんっちゅうねん。ジャッキー映画の明解さを見習っていただきたいものです。勿体ない。ピーター・ハイアムズ監督、そりゃ自分で撮影もすればギャラもアップでウハウハでしょうが、きっちりアクションを撮れる撮影監督と組むのがいいと思いますよ。余計なお世話ですが。
それはともかく、女王様に扮したカトリーヌ・ドヌーヴのキャラクターが『椿三十郎』入江たか子のおっとり奥方風だったり、夜の合戦シーンなどのそこここに黒澤明映画の影響が見受けられ、ふーむピーターも黒澤好きなんだなー、は。『エンド・オブ・デイズ』にしても『ヤング・ブラッド』にしても、セット、美術が無意味に豪華なのも黒澤の影響か? と、変な納得の仕方をしたりしました。
ピーター・ハイアムズ監督は『カプリコン 1』を見直して初心を取り戻すのがいいと思いますよ。あ、ティム・ロスも悪役を無意味に気持ちよさげに演じてます。『エンド・オブ・デイズ』を面白くご覧になった方にオススメ。
BABA Original: 2001-Nov-19;