溺れる魚
監督の堤堤幸彦氏はテレヴィの演出もされているらしいがそちらは未見。映画の方は、何がおもしろいのかサッパリ分からなかった『金田一少年の事件簿/上海人魚伝説』、『ケイゾク/映画』なんてので、まるで期待せずに見に行ったためか(なぜ見に行く?)、なかなかおもしろかったのである。
「一体、日本はどうなっちゃうんだろう?」との劇中人物の呟きが表すように、日本、といっても東京の、常識を越える世紀末的現象の数々を散りばめつつ描かれる企業恐喝事件。世紀はかわっても世紀末的状況は続いている。一見、グロい描写があったりの、猟奇犯罪があったりの『ケイゾク/映画』的犯罪ミステリーかと思いきや、実は軽妙・洒脱、とは言い難いが監督が目指したのは日活アクション的犯罪コメディ。それは宍戸錠が本人役で登場、エースのジョー的活躍を見せることでも肯けよう。
ちょうど鈴木清順『殺しの烙印』または『野獣の青春』様のぶっ飛び演出がふんぷんと散りばめられ、テンポはもっちゃりしているが最近の若手監督にありがちな演出の過剰さもこのような「おもちゃ箱をひっくり返したような」映画にはシックリ来るかもね。言うにことかいて「おもちゃ箱をひっくり返したような」とは何事か。紋切り型の形容をしたのは他でもない。映画の中にブチまけられた数々の事象がコレ、「世紀末的状況」と言うにはあまりに牧歌的。いや、妙な異常性格者・ゲイパーティ・劇場型犯罪などアレコレ登場するものの紋切り型にて「ああ、またこれか」とノンビリ、ホノボノと鑑賞せしめるからで、いくつか笑える場面もあり『リング 0』の仲間由紀恵さんもクンフーを披露、退屈せずに鑑賞を終えることが出来てああ良かった。どうなることかと思いましたよ。
しかし、この映画が目指した日活アクション映画とは本来プログラム・ピクチャー、二本立てにて公開されていたもので、二本あるから一本くらいワケのわからん好き放題の映画があってもよかろうとのアナーキーさが横溢した。それがまたそこはかとなき反体制の叙情(何)を醸し出したものだが、一本立て興業にてコレではいかにもお寒い。よって上映時間を 80 分に刈り込み、何かの添え物でこっそり公開されていれば私も大いに褒めちぎったであろう。
IZAM さんの魅力炸裂脱力演技からも目を離せず、宍戸錠フリークの椎名桔平と、女装マニアの窪塚洋介のダメ刑事コンビに加えてクールな仲間由紀恵のアンサンブルは続編を期待させる、っていうか 60 年代日活であれば半年に一本くらい続編が出来ていただろう。この線で行っちゃってください。意外とオススメ。広い心でヨロシク。
BABA Original: 2001-Mar-02;
|