ふたりの男と
ひとりの女
『メリーに首ったけ』ファレリー兄弟新作。ジム・キャリー主演。ファレリー兄弟はただでさえクドい演出なんだが、世界でもっともクドいギャグをかます俳優を迎えてクドくならないワケがない、が、それは『Mr. ダマー』の話。今回は、男女が犯罪にまきこまれアチコチ移動しながらピンチをくぐり抜けたり、というアメリカ映画伝統のストーリーラインを敷いてそれなりに物語を転がすギャグ満載にて、クドさ 50 %ばかしカット。『キングピン ストライクへの道』以来の見事な傑作。
ジム・キャリーにとってもイマイチ才能をイタズラに浪費感が漂った末に『グリンチ』、映画史上最悪の凡作(なぜかアメリカでは大ヒット)に出てしまったワケだが、『ふたりの男とひとりの女』にて映画史に記憶されるべきなりと思わせる素晴らしいコメディアンぶり発揮で一挙一動すべてがおかしい、というクリーンヒット。
お話は、というと主人公チャーリーは真面目な警官にて善良すぎて街の住人からは馬鹿にされまくってブチ切れ。他者への攻撃をともなう精神分裂・二重人格となってしまってもう一つの人格その名もハンクはとにかく幼女虐待・セクハラ等々良識ある人が眉をひそめることはなはだしの所業。しかしポリティカル・コレクトネス=政治的配慮にがんじがらめのアメリカ社会にあってこのやりたい放題は痛快。何かと世間の批判にさらされやすい警官だが本当はタフに振る舞って欲しいのだという大衆の深層心理を顕わにしている。のか?
では「ひとりの女」とは犯罪に巻き込まれるのは、おお、『ザ・エージェント』のレニー・ゼルウェガーではないか。普通はひいてしまうジム・キャリーのサブいギャグをがっしり受け止め見事。こういうのは受ける方も上手くなくてはいけないのだ。よく知りませんが。なんか撮影で意気投合、ジム・キャリーといい仲になったそうだぜ。んがー。
ファレリー兄弟のこれまで誰もが見すごしがちのところに目をつけるギャグセンスは秀逸。日本人のお客様もゲラゲラわろておられたから大丈夫。ジム・キャリーには黒人の三人の息子がいて、ってなぜに黒人? それは見ればわかる、その三人のブラザーが最高に素敵。メチャクチャ頭がいい黒人兄弟、という設定でその会話が「ヘイ、メーン、この核子の質量の求め方がわかんねえぜ。」「ヨー、ブラザ、そんなのファッキン簡単だぜ、メーン、ブラーブラーブラー」って感じで量子物理学の議論を黒人ノリで繰り広げるのが愉快。
思い起こせば、こんなにわろたコメディーは『ナッティ・プロフェッサー』以来…って面白そうに思えないですか? まあそういわずに。名作。オススメ。んんん、もう一回見に行く!
BABA Original: 2001-Feb-28;
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