15ミニッツ
ロバート・デ・ニーロ主演刑事アクション…って、なんかパッとしなさそうですが、コレがなかなかの傑作。本当。
デ・ニーロ演じるのは「ピープル」誌の表紙にもなったニューヨークの名物刑事。放火殺人事件の犯人を追います。行動を共にするのはエドワード・バーンズ(よく憶えてませんが『プライベート・ライアン』に出ていたらしい)。このバーンズ、刑事ではなく消防官という設定です。放火事件の調査にあたるアメリカの消防官は、拳銃の携行も許され、刑事と同じような権限を持っているそうです。ふーん。
刑事と消防士がそれぞれの立場で、対立しつつ協力しつつ捜査を進めていくという趣向。アメリカ映画お得意の「ベテランとルーキー」という図式ですが、「有名と無名」という対立もあって、ひと工夫あり、です。
犯人は、東欧から借金の取り立てにやってきた男二人。その内の一人が「フランク・キャプラ最高! 『素晴らしき哉! 人生』を見て以来、夢と希望のアメリカに憧れてたのさ!」などとほざく映画好きのボンクラなものですから、話がややこしいことに。殺人、放火など凶行を重ねていくのですが、ヴィデオカメラを万引きし、その一部始終をヴィデオに収めていきます。
『15 ミニッツ』とは、アンディ・ウォーホールの「誰でも 15 分間は有名人になれる時代がくる」から取られています。この映画は、「誰でも有名にしてしまう」マスコミ(主にはテレヴィ)の腐った体質、さらに、刺激的な映像を求め、あわよくば自分も 15 分だけでも有名になることを望む大衆の歪んだ欲望を告発し、アメリカン・ドリームの完全なる変質を描き出す意欲作なんですね。
犯人たちは「この犯罪実録ヴィデオがあれば、大儲けできるし、その金で有能な弁護士を雇えば、無罪にだってなれる!」と策略をめぐらします。たとえ犯罪者でも、有名になった者勝ちのアメリカ。「有名になること」こそ最優先事項であり、道徳・倫理が入り込む余地はありません。いやはや。
そして物語は意外な方向へ…、と、ついつい決まり文句を使ってしまいましたが、この映画、珍しくも「うわー、こんな展開にしてしまって一体どう収拾つけるんやー?」と、思わず途方に暮れてしまいました。こういう宙ぶらりん感は、名作『エ…』…おっと、これを書いちゃあネタバレですね。危ない危ない。…って分かっちゃいましたか?
事件を解決するのは、名声を望まず、現場で自らの職務を全うしようとする、高潔なる精神です。みんなそんなに有名になりたがらないで地道に働きましょう、「映画好き」が高じると困ったことになりますよ、とのメッセージは思わず我が意を得たりと膝を打ちつつ、娯楽作の体裁を保ちながら、愉快なテーマを描き出した製作・脚本・監督を兼ねるジョン・ハーツフェルドは、今まで全然知らんかったけど「要チェックやで!」と一人ごちた。なかなかのオススメ。
ここで一句。有名に 成りたがるのも 程々に。
BABA Original: 2001-Jun-06;