リトル・ニッキー
アメリカではマネーメイキング・スターの上位にランクされているらしいのですが、日本では人気があるのかないのか、ってぇと、全然人気がない、『ウォーターボーイ』『ウェディング・シンガー』などのアダム・サンドラー主演最新作です。製作費なんと 100 億円の超大作コメディですが、話のネタ的には 100 億円もかける必要まったく無しで、無闇に豪華なキャストを揃えた浪費感漂いつつ、かと言って底抜け超大作というわけでもなく、それなりにキッチリ練り上げられたギャグ満載にて、なんというか、アメリカ映画の度はずれた資金力にただ呆然とたたずむのでした。
アダム・サンドラーは、地獄の支配者サタンの三男にて…って、いきなり説明するのもアホらしいのですが、とにかく製作費 100 億円、バカにしてもいられないので説明しますが、ヘヴィメタ大好きのボンクラ、しかし地獄でイチバン気立て良しの青年です。
サタンを演じるのは、なんとハーヴェイ・カイテルだ! 果たしてギャラは如何ほど? と、ついつい下世話な心配をしてしまいますが、そのサタンも在位 1 万年目を迎え引退、息子に跡目を継がせようとしますが、やっぱりもう 1 万年くらい続けちゃおっかなー、とくれば、すっかり跡を継ぐ気満々だった長男・次男がブチ切れて、地上に舞い降り、ニューヨークに地獄を現出せしめんと悪逆の限りを尽くし、それを阻止せんと我等がアダム・サンドラーが敢然と立ち向かう…。
と、説明すればするほどアホらしく、何故、こんな設定で 100 億円も資金が集まるのだ! あ、こんな設定だから 100 億円も集まるのか? あーもー分からん! と、またもや途方に暮れたのでした。
さてギャラのおこぼれに預かろうと群がったのは、ハーヴェイ・カイテル、『ノッティングヒルの恋人』のスパイクことリス・エヴァンス、パトリシア・アークェット、その他サタデー・ナイト・ライブに出ているらしいコメディアン多数。更にクェンティン・タランティーノが登場するにいたっては、「お前、何しとんねん! トットと新作撮らんかい!」と、思わずツッコミを入れてしまいました。
主人公は、いままで地獄で暮らしていた、ということで、例えば「食事の仕方」すら知らない途轍もない馬鹿です。「食事の仕方」といっても、「ナイフは右手、フォークは…」というマナーの話じゃないですよ。「口を開けてその物体を中に入れ、歯を噛み合わせてちぎり、上下にアゴを動かして十分柔らかくなったらノドの奥をぶるぶるさせて奥へと押しやる」…と、本当に「食事の仕方」を全く知らないという馬鹿です。
馬鹿を馬鹿にするのもホドがある! 逆に考えれば、観客がどんどん馬鹿になってきているからこそ、映画の馬鹿もますますエスカレートせざるを得ないのですね。日本でも馬鹿が増えているようですが、アメリカもたいへんなことになっているようです。ここで一句。サンドラー 馬鹿にされても 大儲け。
監督は、『とべないアヒル』などの脚本家出身スティーブン・ブリル。果たして、日本の観客には何が面白いのかサッパリわからないサブカルチャー・ネタも多いのですが、ヒネリまくったストーリーかつテンポもなかなか快調、何と言っても多額の製作費をかけての地獄の風景など素晴らしいのでオススメです。
BABA Original: 2001-Jun-03;