2番目に幸せなこと
『ベスト・フレンズ・ウェディング』でジュリア・ロバーツの友人を演じたルパート・エヴァレットが、今度はマドンナの親友を演じる。アメリカではセレブ感漂う美女の友人がゲイ、「愛のキューピッド」または「狂言回し」的役割を演じる、というパターンが増えていると思うが、何故? 何にせよ、おもしろいので良い。『ベスト・フレンズ〜』では J ・ロバーツのドタバタを少し距離をおいてクールに、しかし愛情を持って見つめる R ・エヴァレットが最高であり、その辺も念頭においてのキャスティングだろう。
マドンナは、才色兼備なヨガインストラクターで、「完璧すぎて」恋人が定着しない。ゲイ・コミュニティと関わりを持っており、R ・エヴァレットに色々相談に乗ってもらっているうちに、ある夜、カクテルを飲み過ぎて関係を持つ。一回の性交渉で子供が出来てしまって、さあ、えらいこっちゃ! と、前半は茫洋たるロマンチック・コメディが展開。
しかし、さすがというか、結局、というか、監督が『真夜中のカウボーイ』『マラソンマン』などの「社会派」ジョン・シュレシンジャーなので、後半は、ゲイを巡る社会問題が提起され、俄然描写がイキイキとしてくる。マドンナと R ・エヴァレットは子育てのため、セックスレスな家庭を作るが、マドンナに新たなロマンスが生まれ仮の家庭でなく、「普通の」家庭を持ちたい、との願望が生まれる。R ・エヴァレットは一生懸命子育てに励んでいたのだが、マドンナに息子を取り上げられ、サメザメと泣く。ルパート可哀想過ぎ!
R ・エヴァレットは父権を主張し、法廷闘争に持ち込む。これは、アメリカのゲイ解放運動の一定の前進を示すエピソードだろう。詳しく調べたわけではないけれど、現代の法体系はヘテロセクシャルを自明のこととして組み立てられていることは想像に難くない。男同士、または女性同士の結婚は法的にはなかなか認められないし、ゲイ男性の父権も然り。ゲイも、遂にヘテロセクシャルと同様の法的権利を主張する段階に達し、映画のネタとなる。これまでもお気楽に生きてきたゲイ男性が子育てに奮闘する『赤ちゃんに乾杯』(その翻案である『スリーメン・アンド・リトルベイビー』)などがあったが、法廷闘争にもつれ込むところが新しい。
R ・エヴァレットの父権には、ゲイであることとは別に、少々問題があった、という設定で、問題を提起しておきながら、正面からの回答を避けた感があるが、とにかく、道義的にはマドンナに非があるにもかかわらず、法的に R ・エヴァレットは敗北する。ゲイの存在を意識する法体系の見直しが必要なことをこの映画は暴くのだ。
とにかく、R ・エヴァレット最高! ぜひ、『ベスト・フレンズ・ウェディング』とセットで見ていただきたい傑作。ところで主題歌がマドンナによる『アメリカン・パイ』で、劇中でも「ゲイの鎮魂歌」風に使われていたが、どなたかこの曲の謂われをご存じないですか?
BABA Original: 2000-Jun-21;
|