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Movie Review 2000・6月20日(TUE.)

歌舞伎「源平布引滝・義賢最期

 オパールサイトのReviews 目次を見てみますと、古典芸能ものは昨年 9 月 26 日の能「道成寺」以来になるみたいですね。初めての劇評、がんばってやってみました。

 お家再興を志しながらも死んでいく一人の武将の物語を国全体が平和ボケにかかっているこの時代に見るのは、なんとも奇妙なものであります。単に贔屓役者だけを目当(おばちゃんに多い・中条きよしショーとかのノリで)に観劇するのではなく、作品・芸術として見てみると人間として何か考えさせられるものがある芝居といえるような気がしました。

 今回、東京・歌舞伎座で見てきたのは『義賢最期』というお芝居。98 年(平成 10 年)に十五代目を襲名して話題になった片岡仁左衛門が主人公・木曽義賢を演じました。昭和 40 年(再初演)当時、まだ泣かず飛ばずの一役者であった彼が上演されなくなっていたこの作品(宝歴 7 年・1757 年初演)を復活・主演を演じ一気にスターの座にのし上がったという出世作・当たり役です。

 木曽義賢(木曽義仲の父・片岡仁左衛門)は兄(源頼朝)が平家に殺された後、平家に降伏しますが、水面下で源氏の再興を企んでいます。その時、平清盛から使者がやってきて「もし、平家に属するのならば、あんたの兄の首(頼朝の生首・髑髏)を足蹴りして誓え」と無理なことを言われます。耐えきれなくなった、義賢は使者を切り殺し(逆ギレ)、平家側の兵隊と壮絶な綱戦いを繰り広げますが、志し半ばで死んでしまうという悲しい物語です。

 前半部は皆さんのよく知ってる、難しい退屈な会話劇です。(これはわりかし面白いので眠たくはならないですが)観客が眠たくなってきたころに、下座(京劇のように、バック演奏が待機してます)の音楽で陣太鼓という「戦の効果音 & テーマ曲」が流れてきます。これで観客、眠気すっきり!

 そして十数名の兵隊さんが登場します。そして前半の白い着物(今でいうパジャマみたいな物)から打って変わって、長袴を着用し、額から血を流して、八つ墓村の主人公ばりに刀を振りまくり主人公の再登場です。これで、観客、身を乗り出す! なんとも憎い演出です。

 この芝居の見所はなんといっても後半部分の「大立回り」ですね。三枚の襖を鳥居の形に組み、崩れ落ちる「戸板倒し」や、屋台の上から水平前方に倒れる「仏倒れ」、襖を滑り台のように使う、矢は何十本と飛んでくる! 市川猿之助の「スーパー歌舞伎」に対抗して、「アクション歌舞伎」という命名はどうでしょう? 皆さんが日ごろから思う退屈な歌舞伎とは一味違い、迫力のある見せ場が豊富な作品です。

 アクション映画をこよなく愛しているアクションマニアの方も、そうでない方も楽しんでいただけること、間違いなしです。この作品が、近々関西でも上演されるように祈ってやまない次第です。

akira28:web site「28web 」)


Original: 2000-Jun-20;

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