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Text by 小川顕太郎
2006年06月20日(Tue)

インサイド・マン
映画

 TOHOシネマズ二条にて『インサイド・マン』を観る。スパイク・リー待望の新作である。スパイク・リーに関しては、前作の『SHE HATE ME』が日本で公開されず、私は勝手に「何かの陰謀だ!」と騒いでゐたのだが、どうやらアメリカでは興行的にも批評的にも惨敗だつたさうで、それで日本までやつて来なかつた、といふ事らしい。ううむ、ホンマか?

 とにかくこの失敗が切掛けで自らのプロダクション「40エーカーズ & ア・ミュール・フィルムワーク」を縮小までしたといふスパイク・リー。復活をかけての一大勝負が、このブライアン・グレイザーと組んだ『インサイド・マン』である!

 しかしブライアン・グレイザーと言へば、ジェリー・ブラッカイマーと並んでハリウッドを牛耳つてゐる大物プロデューサーである。つまりは本来ならスパイク・リーの敵だ。多分、ロックフェラーの手先だらうし。そんな敵と組んで大丈夫なのか、スパイク・リー。金の為に魂を売つたんぢやないだらうな。などと、観る前は様々な疑惑が渦巻いてゐたのだが、観てみるとそんな心配は全て吹ッ飛ばす超一級のエンタテイメント! 且つ、様々な毒がしつかりと仕込んである素晴らしい作品となつてゐたのであつた。

 先がどうなるのか読めない展開、犯人と刑事の頓智合戦、と、ストーリーも凄く面白く、ぐいぐいと引き込まれてしまふのだけれど、そんな中に様々な人種差別ネタをスパイスとして挿入していくのがさすがスパイク・リー。細部の豊穣さが映画を豊かにしてゐる。そして最終的にはロスチャイルド叩きへと収斂していく、といふ構図もなかなか痛快である。しかし、単なるロスチャイルド叩きなら、それこそロックフェラーの茶坊主だ(ロックフェラーとロスチャイルドは争つてゐるので)。そこで、ロスチャイルドといふ名前は出てゐるものの、ロスチャイルドのみならず、ロックフェラーも含んだ国際金融資本家全てを弾劾してゐる、と、とれない事もない撮り方をしてゐるのである。老獪なり、スパイク・リー。もちろん、我々としてはさう観るのが正しい。戦争を利用して金儲けをする連中に批判の目を向けること。これだね。

 ま、それはともかく、デンゼル・ワシントン、クライブ・オーウェン、ジョディ・フォスターと、出演陣が素晴らしいので、スパイク・リーとか陰謀論とかに興味がない人も充分に楽しめます。音楽も素晴らしくカッコいいです。

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