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Text by 小川顕太郎
2006年02月13日(Mon)

天才マックスの世界
映画

 DVDで『天才マックスの世界(ウェス・アンダーソン監督)を観る。これは名門校に通ひながらも、本業である勉強は全くせず、課外活動ばかりに異常に力を入れてゐる15歳の少年を主人公とした物語。様々なクラブに所属したり、自分で創設したりして、駆けずり回つてゐるのだ。

 ストーリーもさることながら、演出や音楽の選択などが独特で、なかなかに奇妙な印象を残す作品であり、私はかういつた作品は文句なしに好きである。が、諸手をあげて、といふ訳ではない。たとへば、年上の女教師に対する恋情や、大金持ちの年上の友人の存在、全く周りが見えてゐないジコチュー丸出しの傲岸不遜さ、など、青春の痛い妄想爆発の世界観に、いまひとつ馴染めないものを感じるからである。いや、決してイヤな訳ではないのだが、正直良く分からない、といつた所だ。大体私は、課外活動=クラブ活動にいれあげた事は全くないし、そもそも学校自体に興味がなく、サボりがちであつた。だから、かういつたマックスのやうな人間の気持ちはよく分からないのである。

「さうかしら」と、トモコが言つた。

「なんだか、演歌サバイバーズをやつたり、俳句チェンバーをやつたり、『あへこは(敢へて恐い映画を観る会)』を創設してわざわざ観たくもないホラーを観に行つたり、畦石舎に所属して篆刻をやつたり、ノーザンソウルDJをやつたり、バトル大会を開催したり、春は花見、秋はパーティーと、本業より課外活動に力を入れてゐるやうに見えるけど」

 いや、それは…。

「さうさう、駄パンフを追放する、とか言つて、『若い根つこの会』とかいふ訳の分からないものもやつてゐたわねェ。京都パリ化反対運動とか。大体、なんで毎日こんな“店主の日記”なんてものを書いてゐるのよ」

 むむむ…で、でも、マックスはさ、演劇に力を入れてゐるんだよ。脚本を書くの。それが、私との最大の違ひだな。私は演劇には全く興味がないし。

「あら、オパール5周年の時に、『カフェ・オポール』といふ寸劇の脚本を書いてゐたのは誰だつたかしら?」

 ……さうか、マックス、君の気持ちがよく分かるよ。

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