年を越して
[etc]
オパールで年越しをしようと考へた常連さんたちが、続々と来店し、カウンターに座を占め始めた。タケダくん、ダイスケさん、オイシン、テラリー、ワダくん、カズ16、そしてババさん。みなが口々に言ふのは、今年は年末感が薄い、といふ事。ホンマに年末か? 信じられない、といつた感じなのだが、こんなんでちやんと年が越せるのだらうか。などと心配しなくても、歳月は勝手にやつて来て、勝手に去る。気がつけば、0時を過ぎてゐた。
「あ、過ぎてもた。とりあへず、おめでたうございまーす」
「何がめでたいねん。これから日本はドンドン悪い方向に向かうのに」
「まあ、年々税金はあがるし、世の中も軽薄化していきますけど…、でも、今はとりあへず、めでたいぢやないですか。無事に年を越せて」
「だいたい何でこんなに男くさいねん、このカウンター。殺風景な。」
「いいぢやないですか、男が7人。七人の侍。…あれ、タケダくんが帰つてゐて6人だ。」
「でも確かに殺風景ですよね、男ばつかり。さつきボクひとりでゐた時の方が、まだ余裕があつて良かつた」
「いや、オイシンひとりの方が殺風景や」
「異議なし!」
「ひどい! みんなボクの会社が儲かつてゐるから僻んでゐるんだな」
「“死の商人”とつるんでゐるもんな。オイシンがクルマの部品をひとつ作るごとに、子どもの命がひとつ失はれるんだ」
「………。」
「あ、トモコさんがやつて来た」
「みなさん、あけましておめでたうございます。本年もよろしくお願ひいたします」
「おめでたうございまーす! よろしくお願ひしまーす!」
「ところで店主、店主の今年の願ひは?」
うむ、そりや、お世継ぎの誕生だよ。
「また、それですかー! 他のことも願ひませうよ!」
しばらくして、ベッチが遅れてやつて来ました。
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