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Text by 小川顕太郎
2005年11月05日(Sat)

折り返し
etc

 カツヤマ来店。カツヤマの職場には、もと中国残留孤児の人がゐるさうで、やはり日本語が不自由なのださうだが、この人の所に上海から親戚が訪ねてきたらしく、「神戸ノ中華街デ一緒ニゴハンヲタベテクルネ」と言つて、一日仕事を休んだのださうだ。「で、次の日に、昨日は親戚の人と一緒に中華街で何を食べてきたんですか? と、尋ねてみたんですよ」とカツヤマ。

「すると、『イタリア料理ネ』と答へるんですよ! なんで? と思つたんですけど、何か事情があるのかなー、と思つて、どうでしたか? と、さらに訊いたんです。そしたら、『口ニアハナイネ!』ッて、言ふんです。それなら中華料理を食へよ! と思ひましたね」

 なるほど。それは多分、なんらかの深い事情があつたんだらうな。

「さうですかねェ。…話は変はりますけど、ボクも33歳になつたんですよ。これで人生の半分を折り返した気分で、随分と楽になりました」

「ええー! なんで?」とトモコ。「全然分からないわ!」

「いや、だつて水泳とかでもさうぢやないですか。50メートル泳ぐのに、25メートルプールで折り返したら、ホッとするぢやないですか。後は惰性でいけるなー、と。ボクも残りの人生は惰性で」

「なに言つてゐるのよ。あと50年は残つてゐるわよ」

「えええー! そ、そんなに!」

「当たり前よ。しかも残りの人生は、今までのツケを払ひ続ける、辛く、苦しいものになるのよ」

「…イヤだなァ。それ。何とかなりませんか」

「ならないわね。ま、早くツケは払ふことね」

 11月なのに妙に暖かいなァ。

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