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Text by 小川顕太郎
2005年11月06日(Sun)

TAKESHIS'
映画

 MOVIXにて『TAKESHIS'』を観る。この作品は例によつて賛否両論、といふか、相も変はらず「否」の声の方が高いやうだが、いやそれも分からないでもない、といふ些か難しい作品であつた。難しい、といつたのは評価の事で、単純に面白いか面白くないか、といふ話なら実は簡単。それはとても面白い作品であつた。もちろんこの“面白い”といふのも全く個人的な感想で、これがちつとも面白くない人もゐるだらうなァ、それも結構たくさん、といふ事は踏まへた上で言つてゐる訳だが、それなら評価も個人的・独善的に下せばいいではないか、と思はれるかもしれない。が、それにしたつて、やはり、難しいのだ。

 といふのも、私は、果たしてこの作品はゴダールの『アワーミュージック』を超えたのであらうか、つまりは現在の映画の極点にたつ作品なのだらうかと考へてゐるからで、それほどこの両作品は似てゐる。全く似てないやん!! と、言ふ声がいま聞こえたが、いやさういふ意見も分からないでもないけれど、やはり両作品は似てゐると思ふ。まづ、最も似てゐるのが、公開時期。しかも京都における公開時期で、さらにこれに私の観に行つた日を勘案すると、わずかな違ひしかない。これは単なる偶然とは思へない。映画史的に真に重要な作品だけが持つことのできる奇蹟の予兆が、この時期の一致には感じられる。

 次に、これら両作品が、現在の世界の映画界を制圧してゐる「ハリウッド映画(アメリカ映画)」に対する、公然たる闘ひになつてゐる点だ。『TAKESHIS'』の冒頭のシーンは、恐らく第二次世界大戦におけるアメリカ軍と日本軍の戦闘のシーンだし、兵士のたけしを殺さうとするのはアメリカ人であらう。続いて、銃撃銃撃銃撃銃撃! 銃撃! 銃撃!!! 下らないギャグ銃撃銃撃銃撃!! 銃撃! 貧しい画面! 銃撃銃撃銃撃!!! 笑へないギャグ!!! 銃撃! 銃撃! 銃撃! 面白くないギャグ!! 銃! 撃! と、なる訳で、特に海岸における銃撃シーンには、不覚にも涙が落ちさうになつた。ここで唐突ながら、私は自分の心を決めようと思ふ。『TAKESHIS'』は『アワーミュージック』を超えた! 『TAKESHIS'』こそ現代映画の極北に立つ作品だ。これは完全に間違ひがない、と私は確信する。…と、北野武らしき声で「騙されてやんの!」といふ声が飛び込んできたが、別に構はない。とにかく、『TAKESHIS'』と『アワーミュージック』が同時に上映してゐる奇蹟のやうな今、これらを観にいかない手はないではないか、と、私はひとり呟くのでした。

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