Diary 2005年3月27日(Sun.)
アニエス
ワリイシさん来店。秘蔵のブライスを連れてくる。どこに行つても可愛がられてゐるやうで、ワリイシさん自慢の箱入り娘である。しかし、オパールは他の場所とはチョット違ふのであつた。そこは、ポーワールドなのである。ポー店長が現れ、ジーッとブライスを見つめる。
「なに、これ」
「あ、ポー店長はじめまして。よろしく」
「一寸あんた、痩せすぎと違ふ。貧弱やわー、家でろくなもの食べさせて貰つてないわね」
「そんな、ボディはリカちやんだから仕方ないんです」
「また全体のバランスも悪いわねェ、顔デカすぎるわ」
「ひ、ひどい、可愛がつてゐるのに…」
「あんた、名前あんの?」
「アニエスです。アニエス・ヴェルダからとりました。」
「ダッサー! ポーなんかねェ、オリジナルよ。他人から名前をとつたりしてゐないわ。ま、他人がポーにあやかる事はあるみたいだけどね、エドガー・アラン・ポーとか」
「それは妄想です!」
「それになんか暗いわねー。陰気くさいわ。家に閉じこもつてばかりゐるからダメなのよ。ポーみたいに社会に出て働かないと」
「…家で大事に大事に育ててゐるんです」
「ほらー、やつぱり。ただの引きこもりぢやない。あ、分かつた、あんた、今はやりの“ニート”ね。働く能力も勉強する脳力もない、ていふ奴」
「“力”ぢやなくて“意志”です! …これでもブライス同士の集まりにいけば、人気者なんですよ!」
「そんなもの、オタクの集まり、コミケみたいなもんぢやない。やーねー、だからそんな頭デッカチなのよ。人形としての魅力に欠けるわー」
「ト、トモコさん! 言ひ過ぎです!!」
「ほほほほほ! 私は“トモコさん”ぢやないのよー、“ポー店長”なのよー」
いきなり世間の厳しい風に触れて、アニエスが鬱にならない事を祈ります。
小川顕太郎 Original: 2005-Mar-27;