アクアライナー
大阪に行き、アクアライナーに乗る。アクアライナーとは水上バスのことで、淀川や寝屋川などをグルグル廻つて水上から大阪の街を観光する、といふ趣向のものだ。何カ所か乗船場があるのだが、我々は淀屋橋から乗つた。約 1 時間でもとの場所まで戻つてきて、値段は大人一人 1880 円。乗り込むと、思つたより船内は綺麗で気持ちがいい。橋の下をくぐるので天井は低く、平べつたい形の船なのだが、満潮時にはさらに天井が下がる、といふ事で、そのデモンストレーションをやつてくれたりする。船内には常にナレーションが流れて大阪の街の説明をしてくれるし、江戸時代に京都と大阪を結んでゐた三十石船の歌を流したり、わざとらしい大阪弁を流したりと、なかなか楽しい。なにより単純に、今までとは逆に水上から大阪の街を眺める、といふのが面白くて、たとへば何本も橋の下をくぐるのだが、それぞれの橋には「天神橋」などとちやんと名前が書いてあつて、いつもは地名として意識してゐる「淀屋橋」「京橋」などがもとは橋名である、といふ当たり前の事実に興を覚えたりする。水辺にはズラッと桜の木が植ゑてあつて、これが満開ならさぞかしキレイだらう、などと考へる。さう、まだ桜は咲いてゐなかつたのだ。残念。
夕飯時、某レストランにて。隣に座つてゐた人が、店内禁煙にしてゐない飲食店に行つてそこの店員に「なぜ未だに店内禁煙にしてゐないのか」と責め立てた、といふ話を得意気につれの人たちに話してゐるのが聞こえてきて、うんざりする。順境にゐる人間が、その事を嵩にきて、逆境にゐるものを糾弾することほど醜いことはないと思ふ。
「公の場では禁煙、といふのは今やグローバルスタンダードなんだよ。この国はいちおう先進国のはずなのに、未だにこんな体たらくで、ボクは心配になるよ」
といふセリフを聞いた時は、煙草を10本くらゐ銜へてその煙を吹きかけてやらうかと思つた。とはいへ、私は煙草は吸はないのですが。
桜はまだか、桜は。
小川顕太郎 Original: 2004-Mar-27;