叱る
コータローくん来店。「最近、現場に若い奴らが手伝ひに来てゐるんですが、こいつらが道に座るんですよ。もちろん、現場で座るのはいくらでも構はないんですけど、普通にそこらへんの道に座るんです。だから『こら! 座るな!!』と怒鳴りつけるんですけどね。」と言ふ。
なるほど。でも、それはいいことだね。それは叱つた方がいい。
「でもね、『あれ? みんな座りませんか?』とか『なんでですか?』とか答へよるんですよ。それに対して、ボクは一切説明しません。あかんもんはあかんのや! と、決めつけます。さういふのが好きですね、最近は。オヤジになつたんかな」
いや、それは決めつけでいいんだよ。言葉遣ひとか振る舞ひとかは、理屈でどうこういふもんぢやない。そんなものでは決着がつかない性質のもんだから、目上の者がバシッと決めつける。それが躾といふものだし、さうやつて文化は伝へられていくものでせう。見苦しいから辞めろ! と叱りつける。時には拳骨で、それが一番。…とは言へ、なかなか出来ないんだけどね。特に私のやうなひ弱な人間は。
「ボクは縦割りの人間ですから、出来ちやうんですけどね。目上の人間には厳しく、目下の人間には甘い。だから、つい注意してしまうんですよ、目下の人間には。目上の人間には何も言ひません。勝手に恥をかいておけ、と腹の中で笑ふだけです。」
うん、素晴らしい。さういへばハシモトくんも、仕事場で後輩が、たとへばゴミを投げ捨てたりすると、まづ殴つて叱りつける、と言つてゐたけど、さういつた所が縦割りの人間は素晴らしいね。うーむ、私ももうチョットなんとかならんか。
「自転車を盗るやつとか許し難いけどね」とババさんが言ふ。
「あー、そんな奴はしばくしかないですねー。言つても分からないし」
「もう、盗つた部品をネットオークションとかに出品してるのとちやうか! と思ふと、バーッとウイルスとか送つてそのオークションを無茶苦茶にしたくなるね」
「オークションは別に関係ないぢやないですか」
「きつと盗つた奴はこの街に住んでゐるんや! と思ふと、原爆とか落としてあたり一帯を焼き払ひたくなる」
「ははははは、何を言つてゐるんや、このヒト。」
暖かくなつてきました。
小川顕太郎 Original: 2004-Mar-12;