寺子屋
本日はカズ 16 によるハシモトくんへの英語個人教授、その初日である。いつになく緊張した面もちで現れたハシモトくんだが、カウンターだと気が散るだらうから、奥のソファー席にて授業を受けてもらふことにした。筆記用具一式と問題集、辞書などを持つて奥の席に移動するカズ 16 とハシモトくん。いつもなら来店とともに響き渡るハシモトくんの声も、控へ気味だ。中学生の頃はバイクを乗り回すばつかりで、勉強なんかした事がないといふハシモトくんなので、緊張するのも当然だらう。実を言ふとこの時、店内に他のお客さんはなし! 30 歳を前に be 動詞の活用から英語の勉強を始める男と、それを教へる男がゐるだけだ。…ここは寺子屋か?
約 2 時間の授業を終へ、二人はカウンターに戻つてきた。「いやー! 楽しいですわー! カズくん、教へるのムチャムチャうまいし。ホンマ、中学生の頃に出会つてゐたらなー、と思ひます!」。いや、中学生の頃に出会つてゐたら、ハシモトくんはカズ 16 を虐めてゐたと思ふぞ。しかし、まァ、面白かつたのなら良かつた。とにかく続けることが大切だから、2 年くらゐは最低でも頑張つて、で、卒業旅行にブロンクスあたりにでも殴り込みをかけてきてくれ。
と、タカハシくん来店。本日はハシモトくんが英語を勉強したといふ話をタカハシくんにし、ハシモトくんには昨日タカハシくんが分数の勉強をした、といふ話をする。ところでハシモトくん、1 / 3 × 1 / 2 は?
「ええー、確か、これはココとココを掛けるんでしたよねー…2 / 3 です!!!」
…間違つてるやん。
ここから、次はハシモトくんの分数の勉強が始まつた。先生は私。この時すでに、店内の他のお客さんは全て帰つてゐた。……
カフェ辞めて、寺子屋でもやらうかな。
小川顕太郎 Original: 2004-Mar-11;