Diary 2004・12月23日(Thu.)
名前順
ワリイシさん来店。ワリイシさんは小さい頃から名簿の名前を呼ばれるのが一番最後であり、その座を譲つたことはない、といふ。確かに「ワ」行は一番最後だし、「ワ」の次が「リ」なので、ワタナベさんやワタセさん、ワシダさん、ワキタさんなどよりも後になる。ワリイシさんが無敵の最後尾を誇つてきたのもむべなるかな、といつた感じだ。しかし、考へてみれば、このワリイシさんの栄冠も、非常に危ういところで成り立つてゐた事が分かる。たとへば、名簿が「あいうえお」順ではなく「いろは」順であつたらどうか。タブチさんにもツダさんにもナリタさんにも負けてしまふ。また、たとへ「あいうえお」順でも、シナの人がゐたらどうか。王(ワン)さんがゐれば、これもワリイシさんの負けだらう。さらに犬(ワンちやん)が教室に混じれば、これもワリイシさんの負けだ。さういへば『犬は勘定に入れません』コニー・ウィリス(早川書房)といふ本があるけれど、とりあへずこの勝負には関係ないだらう。アルファベティカ・オーダーならヨシダさんに負けてしまふし、音読みされたら「カッセキ」さんとなつて、タカハシくんにも負けてしまふ。考へれば考へるほど、ワリイシさんが無敵の最後尾を誇つてゐたのが、たぐひまれなる幸運としか言ひやうがないといふ気がしてくる。そんな事で自分の幸運を使ひ果たしていいのかワリイシさん! といふ気がしないでもないが、人は自分の幸運を思ひ通りに使ふことはできない。どこで運を使へるか、といふのは正に運の問題であつて、必要な時に運が使へる人は幸運なのだ。つまり幸運な人といふのは、幸運だから幸運になれた、といふ事で、それ以上でもそれ以下でもない。果たして私は幸運だらうか。
本日から強烈な寒さがやつてきました。
小川顕太郎 Original: 2004-Dec-25;
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