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 Diary 2003・6月13日(FRI.)

出ますか

 ハシモトくん来店。昨日の興奮冷めやらぬままに、みなと挨拶を交はす。ハシモトくんは、仕事場の後輩(Y くん)とそのガールフレンド(M さん)を連れてきてゐたのだが、彼と彼女はまだ 10 代! であり、いささかハシモトくんのペースに戸惑ひ気味、のやうに見えた。ハシモトくんは二人に「今日は出るかどうか分からへんけどな、もし運が良かつたら、出るわ」と言ひ、トモコに「今日は出ないんですかねえ、ダメですか。まだですか。」と何度もたずねる。Y くんとMさんは何のことか分からず困惑顔で、トモコは何のことか分かつてゐるけれども、それ故、困惑顔だ。が、ハシモトくんがあんまり楽しみにしてゐるやうなので、仕方なく…「ハロー」と、ポーが出た。

「うわあー! 出た、出た! ほら、ポー、ポー!」とハシモトくんは大喜びだが、Y くんと M さんはさらに困惑顔を深め、ほとんど顔が凍り付いてゐる。二人にとつては、ポーなど多分、ただの薄汚れたぬいぐるみだ。トモコは、たぶんこうなるであらう事を予想してゐただけに、苦しさうだ。しかし、一度出した以上、さう簡単に引つ込める訳にはいかない。しばらくポーに喋らせたり、踊らせたり、ラップをさせたりしてゐたけれど、ますます激しくなるハシモトくんのはしゃぎやうと、凍り付いていく Y くんと M さんの表情との間で、「行くも地獄、退くも地獄」と呻吟してゐた。

 フクイくん来店。ハシモトくんに「あ、アニさん、昨日はどうも」と挨拶され、「アニキに『さん』は付けんといて」と答へる。フクイくんの演サバ・コードネームはアニキである。フクイくんは K さんといふ友人とともに来店したのだが、この K さん、KS 大学の助手をやつてをられる方で、高山宏とも少し面識があるといふ。高山宏ファンである私は思はず身を乗り出し、色々と話を聞かせて貰ふ。とはいへ、最近はすつかり高山宏の新刊ともご無沙汰な私なのですが。久しぶりに、高山節を堪能してみるか、といふ気持ちになる。

「そんなことより」とフクイくん。「そろそろ新製品が揃ひましたよ」と言ふ。さうか、a little beaver にも行かねば。「あ、アニキ、ボクも行きます。無視せんといて下さいね」とハシモトくん。「そんなん、せんよ。お客さんやのに」「ほんまですか! いやー、ぢやあ、何時頃なら喋つて貰へますか」「キミは、喋りに来るんかい!」「いやいや! そんなん、ちやんと買ひに行きますよ。ポーを」「ポーか…」

 タカハシくん来店。この間の休日は、ヤマダくんと二人で、女の子をナンパすべく、河原町を何周もしてゐたさうだ。二十歳で、飲食店で毎日 14 時間以上働いてゐて、週休一日ぢやあ、ナンパでもしなけりゃ、女の子と知り合ふ機会もないよな。頑張れ、タカハシくん! と、とりあへず、エールを送つておきます。

小川顕太郎 Original:2003-Jun-14;

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