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 Diary 2003・7月4日(FRI.)

お遍路

 アキラ 28 来店。アキラ 28 は、この一月ほど、四国にお遍路に行つてきたさうだ 最近は若い人たちの間でもお遍路が流行つてゐるらしいので、その流行に乗つた気楽なものか? と思へば、なかなかそんな甘いものでもなく、何度か死の淵を彷徨つた、といふ。具体的に言へば、それは餓死の危機だ。行けども行けども何もなかつたり、人家しかないやうな山間をひたすら歩むのだが、飲み物も食べ物も尽きて2日ほどたつと、あ、やばい、となるさうだ。とにかく何もないか、あつても人家しかない。そりゃ、川や泉を探したり、夜露を飲んだり、草花を食べたりすることが出来れば何とかなるのだらうが、都会育ちのアキラ 28 にそのやうな芸当はできない。また、人家尋ねて、水と食べ物を乞へば良い訳だが、なかなかさういふ事も出来ないさうだ。まあ、さうかもしれない。

 で、どうなるのかと云ふと、もうダメ、と思つた時に、不思議と色んな人たちに助けられたのだといふ。あそこらへんは、お遍路が多いので、さういふ人たちを助ける習慣があるのかもしれないが、水やおにぎりなどを、恵んで貰つたのださうだ。さういふ日々のことを、アキラ 28 は克明に日記につけてゐたようだが、そこから学んだことは、心のあり方の大切さ、といふ事だ。これは本人も本当に不思議でならないさうなのだが、なんでこんなバカな事をしてしまつたのか、来なければ良かつた、と考へてゐる時は、何日もお恵みがなく苦しむのだが、心の底から敬虔な気持ちになつて遍路に励んでゐる時は、不思議と次々とお恵みがあり、自分の家に泊めてくれる親切な人まで現れたさうだ。この話を聞いたトモコは「うーん、分かる、分かるわ、それは『気』の問題よ。悪い気を出してゐる人には、誰も親切を施したくないものよ」と、したり顔で頷いてゐた。

 ちなみにアキラ 28 は、さる事情があつて、家族のものに内緒でこのお遍路に出たさうなのだが、巡礼中の姿を写真に撮られ(本人は気づいてゐなかつたようだが)、その写真がデカデカと新聞に載り、ドキドキしながら家に帰れば、すつかり全てばれてゐたさうだ。アキラ 28 らしい逸話ではある。

 今日のは、聞き書き日記でした。

小川顕太郎 Original:2003-Jul-6;