大人マンガ
最近の私は、ヒョンなことから手に入れた『アギャキャーマン〈傑作選〉』谷岡ヤスジ(実業之日本社)を読んでゐるのだが、その事をショウヘイくんに話したところ、どうも「谷岡ヤスジ」が分からないやうだつた。「鼻血ブー」「バター犬」「ペタシペタシ」など、いくつかキーワードを並べてみたのだが、ピンと来ないやうだ。帰り道での話だつたので、絵で描いて示すこともできず、マンガ界での「谷岡ヤスジ」の位置づけから説明をしてみやうと、「東海林さだお」の名前を出してみたところ…。
「えーと、その人は『フリテンくん』の人ですか?」
「違う違う」とトモコ。「『フリテンくん』は、植田まさし。『コボちゃん』の人よ」
「『コボちゃん』ですか…」
「さうさう、『ギャートルズ』とかも書いてゐたわね」
違う違う! 違うって! 「ギャートルズ」は園山俊二だよ。えー、東海林さだおは、確か「アサッテくん」ぢやなかつたかな。
「『フリテンくん』と『コボちゃん』の違いが分からない…」
さういふマンガのことを、どうやら「大人マンガ」といふらしいよ。黒鉄ヒロシとか。
「山藤章二とかですか?」
あ、さうさう、たぶんね。
「ボクは、山藤章二が大好きだつたんですよ、子供の頃。図書館に行くと、1 階の児童書の所には手塚治虫がバーッとあつて、まづそれを読破したんです。で、2 階の大人のコーナーに行くと、なぜかマンガも置いてあつて、それが山藤章二や田河水泡『のらくろ』、横山隆一『フクちゃん』などで、それらも全て読みました。『のらくろ』なんかの、吹き出しの中の正字正かな! あれはゾクゾクきたなア…」
いい図書館だなア、杉浦茂とかはなかつた?
「なかつたと思ひます…、といふか、今では『のらくろ』も『フクちゃん』もないですよ。それどころか、手塚でさへ、ない」
えー! なんで? あかんやん、そんな図書館。
なんか、崩壊のスピードがあがつてゐるやうな気がします。
小川顕太郎 Original: 2003;