変態
最近の私の就寝時間は朝の 9 時から 10 時の間なのだけれども、寝る前に明日というか今日の仕事の準備をしていると、店の鍵がない事に気が付いた。
私はトモコが持って帰ったとばかり思っていたのだが、トモコも私が持って帰ったと思っていたそうだ。と、いう事は店の中に置きっぱなしだ! 水曜日に店を閉めたのはショウヘイくんだったので、鍵を置きっぱなしにしている事に、気が付かなかったのだ。本日はショウヘイくんは休み。困った。店に入れない。仕方がないのでショウヘイくんから開店前に鍵を貰う事にする。ショウヘイくんがどこかに出かけてしまうとどうしようもないので、その場ですぐ電話をして叩き起こし、鍵の事を頼んで、私は寝た。
起きたらもう開店時間だった。や、やばい。慌てて店に向かう。雨の中、必死に河原町通りを下っていると、前方にオパールの看板が輝くのが。さすが、ショウヘイくん。私の代わりにきっちり店を開け、営業までしてくれていたのだ。いやあ、目出たい目出たい。これで私も安心して寝坊が出来る…。まことに申し訳ありませんでした。
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オイシンが頭を丸めてくる。なかなか凄いルックスになってワダくんは思わずのけぞっていたが、トモコは顔が凍り付いている。どうしたの?
「せ、正視に耐えない‥」
せ、正視に耐えないって、そりゃちょっと大袈裟では。確かにかなり変態っぽくはなったが…。そういえばトモコは変態が苦手であった。って得意な人はあんまりいないだろうが、言われてみれば、オイシンのルックスは変態そのものだ。ううん、これはかなりキテいる。しかし変態といっても、なんというかハリウッド映画に出てきそうなステレオタイプなかんじで、幼女や少年達の死体をコレクトしてそうだ。
私はそういった変態には興味はない。私が変態と聞いて思い浮かべるのは川端康成で、川端の小説は概してつまらないが、彼の変態性には凄く惹かれる。あのギョロ目で人の顔をジーっと何時間も見つめ続けたり、ストーカーまがいの行為を繰り返したり、物を買ってもお金を払わなかったり、突然ガスホースをくわえて死んだり…。川端のような大変態がノーベル賞をとり、次には大江健三郎のような大偽善者がノーベル賞をとる所なんぞ、日本もなかなか捨てたものではない。
ちなみに、川端の小説は概してつまらないと書いたが、実はメチャメチャ面白いのかもしれない。私がいまだ川端の変態性を正視できていないが故に、真の面白さに到達出来ないのかもしれない。そんな私の現在のフェイバリット川端文学は、三島が嫌ったという「みずうみ」である。川端の変態性がストレートに出たストーカー小説。最高です。
小川顕太郎 Original:2000-Oct-22;