ロマンザ・マツヤマさんの映画ベストテン [2005識者の映画ベストテン]
昨年、好評だったかもしれない、オパール周辺の識者のみなさんに2005年公開映画の、というか、2005年に見た映画のベストテンを選んでいただきました。識者のみなさま、年末の忙しい時期にありがとうございました! 第一弾は、ロマンザのマツヤマさんです!(サイト管理人)
ロマンザ・サンセット・マツヤマの選んだ「2005年に観た映画ベストテン」
1位『輝ける青春』
水平線に夕日が沈む寸前、一瞬止まったように見えたとき、その下にあるすべてのものが美しいと思える瞬間が自分にはあっただろうか。そんな私はカラーティ家の次男マッテオに自分を重ね合わせ何度か涙した。安定した精神を持ち、より良い社会文化を創ろうと前向きに生きる兄ニコラとは対照的に、優れた才能と優しさを持ちながら非常に繊細で、相手の痛みを一人で背負い込むことによってしか生きることのできない弟マッテオ。心に病を持つ少女への医者から虐待、父の死、義姉の犯罪、政府とマフィアとの癒着、そして、惹かれあい自分の中に入って来ようとする恋人に対し、警察官であるマッテオは冷静な対処ができず、自分をコントロールできないままに、映画が4時間ほど進んだところで、自宅アパートの窓から飛び下りて死んでしまうのだった。マッテオ、待ってよ!(失敬)。この映画を観る者全て、自分の中にマッテオを見ない人は少ないと私は思う。同時にニコラのように人生を送れたらどんなにかいいだろうとも。上映時間6時間6分のこの映画。マッテオが主役だと思って観てきたのに、消えてしまうだなんて! 残り時間はおおよそ普通の映画一本分。マッテオのいなくなったこの映画に私は絶望した。そんな私は自分にマッテオを重ね合わせてみた。聞こえる…マッテオの声が…エンドロール中に席を立って帰るやつは目障りだ、ぶっ殺せ! …聞こえる…ポップコーンを食べるときの音って、けっこう耳障りなときもあるんだゼっ! …聞こえる…DVDになってから観ようと思ってんねん、て言うやつはDVDと映画が違うことをぜんぜんわかっていないっ! …聞こえる…死にたいときにには死んでも…いいんだよ…。この世の中のものすべてが美しいと思えるその瞬間を、私もいつか見ようと心に刻んだ京都の夕に、この世のすべての自殺者に優しい気持ちになれたような気がした。
2位『宇宙戦争』
そして私は走った、トムといっしょにひび割れた田舎街を。瓦礫の中を死者の灰にまみれながら家へと向かった。家族を救うために。心臓が激しく鼓動し、少し吐き気もした。絶対に逃げることのできない絶望感が私を襲った。誰も助けてはくれない。人間の作った物はなにも役にはたたない。信じるのは自分だけ、守るのは自分の家族だけ。トライポッドが今にも地面から突き上げて来そうなTOHOシネマズ二条。
3位『ALWAYS三丁目の夕日』
夕日の下には家族愛、近所愛に溢れた下町があった時代。子供たちの自慢はなんといっても父親である。家庭の中で父親が威厳をもっていたその時代、タバコをポイ捨てしても誰も文句を言わない街がなぜか美しく見えた。それでは何故タバコをポイ捨てしても、誰も文句を言わないのか、それは父親たちがやっていたことだから誰も疑問などもたなかったのだ。絶対そうだ。父親に向かって臭いだのキモイだの言える現代社会はいったいどうだ。悪いのは現代の父親たちだ。威厳をもてない父親は確かになさけない。なさけないやつがタバコをポイ捨てするから簡単に潰されてしまうのだ。男たちよ威厳をもて! 道にタバコを捨てよ! そんな映画ではありません。誰もがお金で買える物や実体のない友人に支えられようとする現在、父の存在なんて小さなものです。孤児(みなしご)に近い状態の淳之介の前に突如、金持ち社長の父親が現れます。富裕と貧乏の選択に迫られた彼は、売れない文筆家との貧乏暮らしにこそ愛があったことをあらためて知るのです。〈お金で買える物や実体のない友人〉のない時代です。現代の都会には愛なんてありません。あったとしても嘘っぱちです。そんなものを求める人は田舎にでも行って暮らしてください。音楽メディアすら実体のないものに代わりつつある昨今、劇場で映画を観られることが、昔から変わることのない幸福だと感じたこの日。
4位『甘い人生』
たとえ京都×××のしょぼいスクリーンでも、イ・ビョンホンは世界一スーツが似合う男。世界一回し蹴りが美しい男。彼が出演作のなかで最も光っていたこの映画を観たとき、この世のすべてのものが美しいと思うにはまだ早すぎた。
5位『ボン ボヤージュ』
80年代、フランス映画にふたたび活気が蘇ったとき、誰が呼んだかヌーベルヌーベルヴァーグに私は二十歳代の輝ける青春を捧げていた。大阪北浜の三越劇場、京都四条大宮のコマゴールド、京都駅前ルネッサンスホール。どれも今はない。ボン ボヤージュを観たとき、当時のことを少し思い出し、ひさしぶりにフランス映画を観たという満足を得たのでした。しかし、ヌーベルヌーベルヌーベルヴァーグと呼ぶには少し錆び付いた感じもするが、イザベル・アジャーニだけは決して錆び付くことを許さなかった(と思うよ)。錆び付いているのであろう右の横顔は決して写させなかったのだ(たぶんそう)。私は思った、たとえ50歳でもアジャーニなら0K(オッケー)。最近の若者は、オバハンでも黒木瞳ならアリかな、などと図々しいことをのたまうが、この映画のアジャーニを見てその気持が分かった。ぜんぜんアリ! さて、舞台となるのは、第二次大戦末期のパリとボルドー。インテリアがアールデコ調のパリに対して、アールヌーボー調のボルドーに当時の流行の浸透速度がうかがえ、そんなところにフランス映画の控えめなエスプリを感じてしまった私は、ふと昔のことを思い出した。小学生のときに住んでいた、とてつもないド田舎から、中学に上がると同時にけっこうなド田舎に引っ越したときである。あたりまえのようにベルボトムのジーパンをはいていた私は、そのけっこうなド田舎の同世代の少年たちが皆スリムのジーパンをはいていたのを見てカルチャーショックを受けたのである。が、当時わりと田舎〜都会ではストレートジーンズが流行りはじめていた。
6位『シンシティ』
なんでも監督のロドリゲスさんはこの映画を撮るために、ハリウッド監督組合みたいなの脱退したらしいですね。それ絶対正解です。実は私も理容美容業組合に入ってませんから。そんなもの入ってないからといって、保健所の人にに怒られるわけでもないですしね? 酒販組合みたいに積立金横領されて無駄遣いされたらおしまいですからね。しかしあの特殊メイクすごかったです。変わった顔になるもんですねぇ。殺人兵器ミホ。えっ、あれ違う?
7位『ジャッカス ザ ムービー日本特別版』
ブリーフバンジーでケツから血を出し、ホームセンターの売り物便器にウンコする。鼻からワサビ吸ってゲロ吐いて、変な顔のパンダの気ぐるみでスキップ。なんて楽しい愉快な仲間たちなんだ。アメリカ万歳!
8位『ニュースの天才』
わかります、わかりますよ、編集長さん。こんな権威ある雑誌で嘘は良くないですよね。でもね、ここあなたの会社じゃないんですから、そんなにリキまなくたっていいんじゃないですか。どうせ雇われでしょ。なんてそんな雇われ店長の店って多くないですか? みなさん。店長も店員もダメダメな。私とくにうるさいわけじゃないのですが、おい、無言で対応するな! とか、明らかに年上に向かってタメ口でスニーカー薦めるな! とか、豚肉が古くて血がまわって臭いぞ! と何度か怒りそうになったことがあります。みなさん! ロマンザは違いますよ〜、あっオパールも。
9位『親切なクムジャさん』
親切っていいもんですが、クムジャさんは相手に恩を着せています。これ絶対良くないです。当然のことをしたと思わなくてはいけません。または、させていただいたと、まるで相手に親切にしていただいたくらいに思って親切にさせていただかなければいけません。クムジャさんの娘ちょっとブサイクです。誰に似たんでしょ。韓国映画のキャスティングちょっと甘いと思うことよくあります。甘いといえば『甘い人生』のときもそうでした。ヒロイン役あまり可愛くありません。でも、クムジャさんの娘とよく似てます。この二人が母娘なら納得です。
10位『セルラー』
これです! これぞ親切です。見ず知らずの電話の相手にここまで必死になれる、この主人公の青年は偉い奴です。イタズラかもしれない電話の相手を真剣に助けようとする心意気が大切なのです。それがたとえイタズラだったとしても、この人はきっと笑って許してくれるでしょう。そうです、ダマすよりダマされるほうがいいんです。ダマされたからといって、その後きっとなにかいいことが待っているわけではありません。それはともかく、この映画ではイタズラ電話ではなく、電話の相手は家族共々絶体絶命の危険にさらされていたのでした。やっとのことで助けることができたとき、電話の相手だったキム・ベイシンガーがこう言います。なにかお礼できることはない? 青年はこう返します、もう二度とオレに電話しないでくれ! かっこいいです! これです! いつかどこかで応用できないものかしらん。もう二度とオレの前で転ばないでくれ! もう二度とオレの前で重たい荷物を持たないでくれ!(電車で) もう二度とオレの前に立たないでくれ! …なんてね。キム・ベイシンガー、オレ的にはアリです。
そんな私が選んだワースト10
- 1位『???』
すみません、タイトルも内容も忘れてしまいました。何か凄いものを見てしまったように記憶しております。(※)
- 2位『約30の嘘』
嘘を一個ずつ数えながら観て、結果的に約30個になれば、それはそれは楽しい映画に思えるかもしれません。とりあえずは、ピーター・グリーナウェイの『数に溺れて』で練習を。(※)
- 3位『七人の弔』
これタイトルがよくありません、山城新伍のハゲ武者と同レベルです。せめて『約七人の弔』とか。(※)
- 4位『恋は575』
これは俳句の映画ではございません、575の映画です。でも高校生が自由律俳句を試合に出すことはいかがなものかと思ったので約575です。これは俳句チェンバー約12人の総意でございます。(※)鏡餅 まるむ前より ひび割れし(いまいち!)浪漫停空(私の俳号)
- 5位『コンスタンチン』
観ると目が骨折するとある人に言われ、未だ観ていない『デビルマン(実写? 版)』ですが、こちらは骨折しない版です。しかし、喫煙は自殺行為といったような根も葉もないメッセージは実にアメリカっぽいです。この映画のオチも結局それかい! ってズッコケました。アメリカ国民はいいかげん政府にバカ扱いされていることに気付いて、ジャッカスのようにちゃんとした人たちを見習って欲しいものです。(※)
- 6位『レイクサイドマーダーケース』
あんなガキどもは、内臓ブローカーに売っぱらってしまえばいいんです! それは約七人の弔の内容です。ダンカンさん、前にこの原作読んだの?
- 7位『マシニスト』
すごいです、あのバットマンの人、誰でしたっけ、あんなホネホネ人間になるまでの役づくりには脱帽です。でもあんた、ちょっとだけ寝てたやん! 約365日寝てへん言うたんちゃうのん? 。っていうか、そのパターンもういいっての。もっとマシな映画にしてくれ! もっとマシにシテ! マシに…はい、すいません。(※)
- 8位『戦国自衛隊1549』
おぬし、この世が滅びてもよいと申したそうじゃな、と言って現れたときのワイシャツとズボンのサイズ具合がバッチGooな北村一輝。
- 9位『(ゴールデンカップス)ワンモアタイム』
ゴールデンカップスって、当時すごくカッコよかったらしいですねぇ。で、いつになったら当時の映像出てくんの? 。いやいやテレビのやつじゃなくって、いやいやいや今のオッサンらの同窓会ライブはいいから、当時の本牧のライブですよ〜んっ。えっ、ないの?(※)
- 10位『サマータイムマシンブルース』
タイムマシンについてどうこう説明しても、ねっ、結局矛盾を埋められないでしょ。まぁ、そんなことはどうでもいいという設定みたいだし、これはこれで、あとは若い人だけで、ごゆっくり。私はもっと輝いている青春の映画を観たいので。(※)
※勝手に選んだワースト10ですが、何ぶん性根が腐った私が選んだものですので、これら『フォーガットン』を含む約10の映画に思い入れの深い方は何も気になさることはございません。
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