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2005年12月08日(Thu)

ダーク・ウォーター ☆☆☆★★

Text by BABA

 なぜ、この部屋だけが——? ババーン! 最高に面白かった中田秀夫監督『仄暗い水の底から』をリメイク。監督は名作『セントラル・ステーション』のウォルター・サレス、音楽はデヴィッド・リンチ作品でおなじみアンジェロ・バダラメンティ、脚本は『死と処女(おとめ)』、『フィアレス』などのラファエル・イグレシアス、撮影は『オール・アバウト・マイ・マザー』『ゴーストワールド』のアフォンソ・ビアト、と最高級のスタッフがズラリ。

 出演はアカデミー賞女優のジェニファー・コネリーに加え、ジョン・C・ライリー、ピート・ポスルスウェイト、ティム・ロス、なかなか無闇に豪華なキャスト、さすがに見応えのある秀作でございました。

 お話はオリジナルとほとんど同じですが、ホラーな演出は控えめ、『ローズマリーの赤ちゃん』、『シャイニング』的な、真面目に(?)ホラーに対するアプローチ、超常現象描写も抑えに抑えまくって、超常現象を鼻から信じていない私にはちょうどよい按配です。

 ガッシリとキャラクター造形されております。若干ネタバレですが、主人公ジェニファー・コネリー、なぜ、余裕を無くしてキィーッとなっているのか? それは、自分の母親がまともに子育てしてくれなかったという過去を持ち、「ひょっとして、自分も母親失格になってしまうのでは?」という不安を抱えているからで、どんどんキィーッとヒステリー状態になっていく……のが、恐ろしくあり悲しくもあり。そして、貯水槽で××を発見し、ブツッと逝っちゃったのでしょうね。まったく不憫な話でございます。

 脇役の不動産屋ジョン・C・ライリー、アパート管理人ピート・ポスルスウェイト、弁護士ティム・ロスも、それぞれに問題を抱える人格であることが匂わされ、ドラマにもの悲しさを加えるのであった。

 また、母娘を乗せたロープウェイ(トラム?)がガッコンと動き出して、不安な、浮遊感を漂わせるオープニング、母娘が住まうのはNY、ルーズベルト島の老朽アパート、なんでも元は精神病院や救貧院などがあった島だそうで、この、ロケーションが圧倒的です。

 しかしながら、オリジナルはクライマックス、ホラーなショックシーンのつるべ打ちが気色よかったのですけど、リメイク版は実にあっさり、それまでガッシリとお膳立てをしてきたのに、ここでドッカンドッカンとホラーシーンを連打しないでどうする? と、勿体ない感じです。

 それはともかく、主人公の失敗は、ジョン・C・ライリーが斡旋し、ピート・ポスルスウェイトが管理人をつとめるアパートなんかに引っ越したからだ! …であります。中田秀夫のオリジナルも、「アパート・マンション選びは、慎重に慎重を重ねなければならない! すべてを疑え!」と鋭く警告を発していたわけで、昨今の「耐震強度偽造問題」を見まするに、『仄暗い水の底から』『ダーク・ウォーター』のアクチュアリティは日に日に増しているのであった。分譲マンション買うとなると高い買い物ですから、「上の階にどんな人が住んでいる/住んでいたのか?」「貯水槽の中を調べたか?」は、重要なチェックポイントでありましょう。

 オリジナルと比べるとアレ(何)ですが、リメイクはリメイクの良さがあり、オリジナル未見の方は、十分お楽しみいただけるかと存じます。オススメ。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

公式サイト
http://darkwater.jp/
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