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2005年12月06日(Tue)

親切なクムジャさん ☆☆☆☆

Text by BABA

 最後の復讐が、一番悲しく、美しい。ババーン!

『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』に続くパク・チャヌク監督「復讐三部作」最終編。

 9.11テロ→アメリカのいいがかり戦争が継続する世界情勢を反映して、ここ数年「復讐」テーマの映画が続々製作、そこはさすが「恨(はん)」の国=韓国の面目をかけてパク・チャヌク監督は「復讐三部作」、『キル・ビル』二部作をとりあえず本数で超えねばならないのであった。(適当)

「残忍な誘拐犯」として投獄されたクムジャさん、娘を取り戻し、ペク先生(チェ・ミンシク…『オールド・ボーイ』のオ・デス)に復讐するため手段を選ばず、人殺しも持さぬクムジャさん。そのキャラクターは、『キル・ビル』二部作、あるいは『女囚さそり』『修羅雪姫』梶芽衣子のキャラクターを彷彿とさせます。

 カッコいい映像と編集の連続『復讐者に憐れみを』のタッチに、腰が砕けそうな古くさい50〜60年代メロドラマ風のナレーションと音楽が加えられ、『オールド・ボーイ』以上の、過剰な通俗性が生まれており、それがユーモアとなって、グロい描写は多々あれど、えげつなさが軽減されているのであった。

 強度のある映像でガンガン語っていくスタイル、ひょっとしたら字幕無しで見ても面白いんちゃう? みたいな。巨大な豆腐がひっくり返される、断崖絶壁で人面犬が撃ち殺される、雨合羽を着た男女が廃校の廊下でずらり順番待ちをする…など、不条理かつ不気味かつユーモラスかつシュールリアルな映像の数々に、私は茫然と、「メチャメチャ面白いやん!」と、ごちました。

 クムジャさんが取り調べで「魔王のビー玉」の色を尋ねられる。彼女は、「黄緑!」と答える。そこへ投げ込まれるのはオレンジ色のピンポン球……とか、携帯電話をクムジャさんがジッと眺める。そこには、オレンジ色の「魔王のビー玉」と、いくつものアクセサリーがぶら下がっている……など、ガーン! とカッコよいです。

 復讐譚のセオリーとして、復讐者は「復讐」が倫理的に許されないことを知り、ひとり孤独に、周りに迷惑かけず復讐を遂げるものですけど、クムジャさんは刑務所で「親切なクムジャさん」として囚人たちに慕われ恩をかけ、協力者を続々増やす。

 そして『キル・ビル』でおなじみの「復讐は冷やして食う料理」という格言も引用され、いよいよキンキンに冷えた復讐を遂げようとするとき、クムジャさんは復讐に荷担する者を大幅に増やすのであった。

 俗に、「鯛も一人は旨からず(どんなにおいしいものでも、一人で食べたのでは旨くない)」と申しますが、13年間十分に寝かされ冷やされ、加えて大勢で味わう、究極の復讐、至高の復讐が描き出されます。「復讐は冷やして食う料理」+「鯛も一人は旨からず」。クムジャさんは、天才ケーキ職人、彼女はケーキと同じく、よく冷やして、テーブルについた者に等分に、復讐を切り分けるのであった…。

 ペク先生の極悪非道ぶりは情状酌量の余地無し! 被害者家族にとって殺しても殺したりないのは明らか、それなら「究極の復讐」を…。この映画は、もっとも甘美な、美味しい復讐…The Art of Revengeを示すのであった。近代が、法や倫理で「復讐」を禁じているのは、それが麻薬のように人を酔わせるものだからではないか…? と腹の中で私語しました。

『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』の出演者たちが、チョイ役で出演しているのも、三部作最終編にふさわしい感じ、パク・チャヌク監督、独特のスタイルを確立しつつあり、これから続々、傑作を作り続けるでありましょう、実になかなか楽しみなのでありました。バチグンのオススメ。

☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

公式サイト
http://www.kumuja-san.jp/

Comments

投稿者 sakurai : 2005年12月06日 20:46

僭越ながら、私もこれはもはやコメディではないかと思って、拝見しました。痛いぞぉと、覚悟して行ったせいもあるかもしれませんが。
で、皆様にお勧めしてるのが「地球を守れ!」。。。。いやー、今年あまた見た韓国映画は、これのおかげですべて吹っ飛びました。
くれぐれも「クムジャさん」を見てからでよかった、と思っております。もし、未見でございましたら、「クムジャさん」→「地球を守れ!」の順番で見ることをお勧めいたします。この復讐は、並でないです。はい。

投稿者 BABA : 2005年12月11日 14:15

> sakuraiさん

確かに、私も何回か笑ってしまいました!
「地球を守れ!」…京都でやってた(やる)んでしょうか?(最近、疎い)
ぜひ、観たい! と思います!

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