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Movie Review 1999・10月09日(SAT.)

オフィス・キラー

 シンディ・シャーマン監督作。『JM』のロバート・ロンゴ、『サーチ & デストロイ』のデヴィッド・サーレ、『バスキア』のジュリアン・シュナーベルなど 80 年代に活躍した主に絵画畑の現代美術作家が、コマーシャリズムに乗っかった映画を撮る流れの中で生まれた作品。R ・ロンゴのようにアート界で築き上げた地位を台無しにした、っていうか化けの皮が剥がれたというケースもあるが、その他はそこそこ評価されたり儲かったりしているわけで、この『オフィス・キラー』もアメリカ映画のルーティンに乗っ取りつつプラス・アルファのある作品に仕上がっているので今後も続々現代美術作家が商業映画に進出する可能性はある。アメリカ映画ってのは常に外界から才能を注入しないと死に絶えてしまうもんだからね。

 こういう風にあの辺の現代美術界から映画制作に「出稼ぎ」に出てくるってのは、作品が売れていないからなのだろうか? まあ、飽きられるのも早いだろうな、と思うけど。

 オープニング・タイトルが近来マレなくらいカッコいいし、S ・シャーマンが 50 年代くらいの映画の登場人物に扮したシリーズに似た雰囲気の画面がビシバシ決まる感じで見どころ多数。S ・シャーマンを「写真家」というのレッテルで語るのに抵抗を感じる人もおられるでしょうが、写真家が監督した映画――ウィリアム・クライン『ポリー・マグーお前は誰だ』、ラリー・クラーク『KIDS』など――は、作品にこめられた美意識が一貫しているという得難い特質があり、常に見るべきもののある作品となっている、と思う。キューブリックも写真家出身だしね。この作品も然り。サイコ・キラーが死体をひきずるカットなど心があたたまります。

 少しネタをバラしますが、コンピュータの導入でリストラが行われる弱小出版社が舞台。この辺の目の付け方はさすが、と思う。アメリカ映画でこういうしょぼいオフィスが舞台になるのって余りないです。誰にも名前を覚えてもらえないくらい地味なおばはんが主人公なんだが、もう、どかどか憎たらしいヤツを殺していくのが痛快。で、多くの人はサイコ・キラーの方に感情移入するので(ホンマか?)、クライマックスはサスペンスが盛り上がらない、とは思いつつ、結構笑かすのでオッケー。とはいいつつ、いつまでも人が殺されるシーンで笑っていていいものか、という気もするけれど。

『プリティ・イン・ピンク』のモリー・リングウォルドを見るのは久しぶりだが、なんとなく S ・シャーマンの顔に似てなくもない。ただの B 級映画として見るとたいしておもしろくないんだけど、S ・シャーマンの絵画作品のひとつとして見ると楽しめる。かもしれない。適当なまとめで申し訳ない。

BABA Original: 1999-Jan-09;

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