白痴
偉人の息子ってのはたいてい誰それの息子といつまでも言われ、オヤジと比べられるのが絶対イヤだろうからわざわざ書くけど、手塚治虫の息子の眞(まこと)が、坂口安吾の小説を原作として自由奔放、イメージのおもむくままに自主映画ノリで作ってしまった、驚くべき事に 2 時間 26 分もある大作。
ノンベンダラリンとした長い映画は嫌いではないのだが、この映画の場合はもっとタイトにまとめるべきではないか? これくらいの内容ならば 80 分くらいで充分なのでは? 苦労して撮影した、思い入れたっぷりのシーンを編集段階でカットできない、というのが自主映画の悪弊であろうが、おいおい、って感じだ。
特に許しがたいのが、「銀河」とかいう寒い名前のトップアイドルをめぐる一連の描写だ。「銀河」さんが歌うシーンがあるが、一曲まるまる MTV 的に紹介される。平行して何かドラマが進行するわけでもない。MTV 的映像は、物語を停滞させるので映画には不向きだというのがオレ様の持論だが、手塚治虫の息子の眞(まこと)は、「銀河」を演じる女優さんを気に入っているのかどうか知らないけれど、なんでここまで?
「銀河」さんがえんえん浅野忠信に対する心情を吐露するシーンがあり、気合いタップリに演じておられるが、観客は忙しい合間をぬってヒマつぶしに来ているのである。「用件は手短に!」って感じだ。とはいえ、「銀河」さんの痛さは近来マレに見るものなので、一見の価値あり。腹ワタ煮えくり返りますよ。
ところで手塚治虫の息子、眞(まこと)の肩書きは「ビジュアリスト」というよくわからないものだ。「ビジュアリスト」って一体ナニ? 要はどこかで見たようなビジュアルをマネしまくる職業のことか?
オヤジの手塚治虫も文学・映画を引用しまくってマンガを書いていたし、長編アニメともなるとパロディ満載だったが、一本スジが通っていた。手塚治虫の息子、眞(まこと)の場合は「引用」というにはセンスが感じられず、「パロディ」というには笑えない。痛すぎるぜ。
そうは言っても、浅野忠信クンは『ねじ式』での快演の連想があるのだろうが、つげ義春的風景にシックリ、説得力あり。良いです。セリフで「キチガイ」、「ハクチ」を連発するのも心が洗われる。でも、なんでこんな痛い映画ばかりに出るんですか? 『孔雀』(クリストファー・ドイル監督)ってのも見たんだけど、これも痛かったなあ。
結論。30 歳過ぎてもキンパツにしているようなヤツに、ろくなヤツはいない。
BABA Original: 1999-Dec-08;
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