MAKOTO
涙の謎が解き明かされる時、監察医マコトの心は愛に震えた。ババーン!
『踊る大捜査線』の脚本家、君塚良一氏、待望の監督デビュー!! 初監督作らしく、「あんたは黒澤明か?」とツッコミを入れたいほど気合いの入りまくった過剰な絵づくり、いちいち風が吹いたり雨が降ったり雪が降ったりどんぱんどんぱん花火が上がったり(妙な上がり方してます)、[銀残し](画面の黒みがくっきり際だつ、手間のかかる現像処理)もしたりして、ずいぶん奮闘されたご様子。
しかし映画は「イチ筋、ニヌケ、サン動作」、脚本が面白くなくては、いかんともしがたいのでございます。
まず、脚本の骨格、[監察医マコト]ちゃんのキャラ設定が奇妙です。マコトちゃんは、「幽霊が見える」特殊能力=I see dead People、『シックス・センス』オスメント少年と同じ能力を持っておられます。映画自体も『シックス・センス』風[泣けるホラー]が目指されているとお見受けします。
[死体]と向き合う職業=監察医がそういう特殊能力を持てば無敵! …なはず。しかし、[人の業(カルマ)]が見える坊主『マッスル・モンク』並の娯楽傑作に仕上がりそうなものなのに、実に沈鬱・陰鬱・退屈な雰囲気で覆われてしまっているのであった…。
沈鬱・陰鬱・退屈な映画にしたかったのなら、「幽霊が見える監察医」という、抱腹絶倒の設定から見直していただきたいと思うのです。
さらにこのマコトちゃん、段取りがメチャメチャ悪いからか、仕事に埋没しまくって、せっかく和久井映見ちゃんと結婚しておきながら、すれ違いの日々を送るのですよ!
マコトちゃんは「彼ら(幽霊)の声を聞いてやらないと!」と、仕事しまくるのですが、そんなワケのわからない理由で和久井映見ちゃんに寂しい思いをさせるなんて、どういう了見でありましょうか。和久井映見ちゃん、かわいそう過ぎるじゃないですか!! お前に和久井映見ちゃんと結婚する資格などない!!
…思わず、熱くなってしまいましたが、さらに、「幽霊が見える」特殊能力が、監察医の仕事に役立っているとは、とても見えません。逆に、その能力は害悪なのでは?
刑事・哀川翔は、変死事件のたびマコトちゃんに、「おい!(幽霊が)見えるのか!?」…などと尋ねます。マコトちゃんが[幽霊]を見れば、[捜査が間違った方向に進んでいる]という判断材料になっているのですけど、そんなワケのわからない根拠で捜査方針を左右されては困る!! と思うのです。そういう、[非科学]きわまりない捜査が、数々の冤罪を生んでいるのでは…?
[幽霊]が見えたので[検死]をやり直す、という描写もあったりして、では[幽霊]が見えなければ[検死]の結果は正しいとされてしまうのか? 科学的なチェックはしないのか? [幽霊]が見えようが見えまいが、監察医は粛々と科学的に検死をおこなっていただければよろしいわけで、そういう非科学的な判定を持ち込むマコトちゃんは、そもそも監察医になってはいけない人物なのではないでしょうか?
と、[監察医]のリアルをよく知らない私が言うのもなんですが、この作品における[監察医]描写のウソ臭さは耐えがたく、現役の監察医の方が『MAKOTO』をご覧になられたら、ちゃんちゃらおかしくて、へそで茶をわかしてしまうと思うのですけど、いかがでしょうか?
思い起こせば君塚氏が脚本を書かれた『感染』の[病院]描写もウソ臭く、そもそも『踊る大捜査線』の[警察]描写もとことんウソ臭かった…とはいえ『踊る大捜査線』の場合は、それが警察に対する批評になっていて面白かったのですけど、[監察医][病院]となると、ただただ、ウソ臭さが耐えがたい! と一人ごちました。
君塚良一氏は、ぜひテレヴィドラマ方面に限って活躍していただきたいものです。とはいえ、[幽霊]の造形は、ちょっと気色悪いのでオススメです。
★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABAOriginal: 2005-Mar-8;