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 Movie Review 2005年7月15日(Fri.)

オープン・ウォーター

 最も怖い実話。ババーン! ダニエルとスーザン夫婦、久しぶりの休暇でカリブ海へ、観光客向け沖合ダイヴィング、ウツボをツンツンしたりして35分後、あー、面白かった! と海面へ戻れば、ありゃりゃ!? ダイヴィング船が見あたりませんね、大海原のど真ん中、置き去りかもーー!? これってドッキリ? そのうちヘルメットかぶった野呂圭介が現れるんとちゃう? など軽口叩いて(ウソ)余裕を見せていた二人ですが、襲いかかるクラゲ! 足をツンツンするカワハギ! ゲロゲロ! ポッケにアメちゃん見っけちゃった、ウマー! ……しかし誰も助けに来えへんし、どないなっとんねん! とわめいても二人…というお話。

 詳しくは「ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」の「現代のマリー・セレスト号事件」をご覧いただくとして。

「実話にもとづく」―“Based on a true event”と申しましても、事実は「ダイヴィング船が、沖合で夫婦を置き去りにしちゃった」くらい、映画の描写のほとんどは、監督・脚本・撮影・編集クリス・ケンティスとローラ・ラウの推測・憶測にもとづいており、『パーフェクト・ストーム』同様、アメリカ映画の「実話にもとづく」ほど信用できないものはございませんね、と一人ごちたのですが、それはともかく全編ヴィデオ撮影、「特撮・CG一切なし!」って特撮・CG使えるほど製作費がなかっただけじゃん! って感じのお安い映画ですけど、レジャーという非日常に口をのぞかせる深淵をリアルに描き出し、ヴィデオ撮りの安さも逆にリアリティあり、近年まれに見るリアルなスリラー、拾いものでございます。

 最初は、遠方に船影も見え、まだまだ余裕の表情、それが徐々に徐々に、これはえらいことになった、しかしどうしようもない! と刻々変化する心理をリアルに描き出す脚本がお見事、進退きわまって「ああダニエル、愛してるわ」「スーザン、ボクもだよ」と愛を確かめあう二人の姿は哀れであり感動的、ほぼ全編、海に浮かぶ二人のみ、トリッキーなカメラワークは皆無、正攻法で押しきった演出もよろしいかと。シンプルな設定だからこそ監督の力量もよくわかるというものでございます。

 ダイヴィングはもちろん、この映画のような大ピンチは山登りでも、海外旅行でもなんでも、レジャーに付きものなのでしょう。また、たかだか20名の人数確認すらできない粗忽者も、そこらへんになんぼでもいてるはずです。私はあらためて『ミリオンダラー・ベイビー』の、「自分の身は、自分で守らなければならない」という教訓をかみしめたのでした。

 ともかく、製作費13万ドル、ほぼ無名の監督・俳優さんでも(だから?)十分面白いスリラーが作れる! ちょっとラストがあっさり気味で物足りないのですけど、上映時間79分、短めですのでオススメです。

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Jul-14;