スター・ウォーズ エピソードIII/シスの復讐
伝説は完結する。ババーン!
さて。ところで私の『スター・ウォーズ』体験といえば、A long time ago、銀河系のかなたで日本公開のはるか以前、少年サンデーのグラヴィア特集でほんの3〜4ページ紹介されたことがあり、タイトルは『惑星大戦争』、そこに掲載されていたメカ=サンド・クローラー、ランド・スピーダーの、使い古され、錆の浮いた、生活感あふれる画期的にリアルな造形にガガガーン! と猛烈な衝撃を受けたことを思い出します。
「この映画早くみたい!」と一人ごち楽しみにしていたところ、あれよあれよとアメリカで特大ヒットをとばし、日本の配給会社は何を血迷ったかお正月公開だったのを夏公開に引き延ばし、やがてあらゆるメディアでネタバレ・予備知識の垂れ流し状態、って私も若気のいたりでそういうものを求めてしまったのですが、そうなりますと映画鑑賞は単なる確認作業となって、私の第1作(エピソードIV)感想は「こんなもんか…。あまり面白くないなぁ」というものでした。
そのとき私は、「事前情報を入れると、映画はつまらなくなってしまう」という苦い教訓を得たのであった。
閑話休題。しかし、そこは流行に流されやすくメディアに踊らされがちな私、くりかえし見るのがトレンドでしたので4回くらい見に行き、何となく面白いようなええ気持ちになって以来、『スター・ウォーズ』シリーズは新作公開やリバイバル公開のたび、ドキドキワクワクで鑑賞してきた28年、それがいよいよ終幕を迎えるのですから感慨深いものがあります。
新シリーズは、『エピソードI/ファントム・メナース』CG満載でゲンナリ、『エピソードII/クローンの攻撃』は、なかなかの面白さ、最終作に期待も高まろうというもの、……いやいや映画に期待は禁物、最悪の事態を想定せねば……と気をひきしめ、満を持して鑑賞にのぞんだのでした、ってホントは『宇宙戦争』を見に行ったら満席だったのでしょうことなしに観たのですけど。
お話はというとネタバレですが、アナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)はいかにしてダースヴェイダーになりしか? いよいよその核心が語られます。
「選ばれし者」と呼ばれた才能豊かな若きジェダイ騎士、なぜダークサイドに転落したのか? そこが焦点ですが、肝心かなめのそこんところにさっぱり説得力がなく、よくわからなかったのです。アナキンの行動がむちゃくちゃ、分裂気味です。「人がダークサイドに転落するのに合理的な説明などできないのだよ」ということでしょうね。うーむ。
前作でアナキンは、アミダラ女王(ナタリー・ポートマン)と禁じられた恋に落ち、秘密裡に結婚してしまいます。今回、恋人たちは久々に再開します。…キミら、誰が見てるかわからん大回廊でイチャイチャしていいのか? 「恋する二人はあまりにも無防備」ということでしょうね。うーむ。
アミダラはアナキンの子どもを宿します。アミダラのお腹がぐんぐん大きくなってもスキャンダルに発展しないのでしょうか? 「『スター・ウォーズ』世界にマスコミは存在しないので、スキャンダルも存在しようがないのだよ」ということでしょうね。うーむ。
また、ジェダイ評議会は、パルパティーン最高議長との政争に敗れ、あわれ粛正されてしまいます。こんなにあっさり殺されてしまうマスターって…。「いかなる達人も、油断禁物」ということでしょうね。気をひきしめたいものである。
と、いう具合にさまざまな人生訓・洞察の数々を与えてくれる『シスの復讐』でございました。
ですが、新三部作すべてに共通して言えるのですけど、「使い古され、錆の浮いた、生活感あふれるリアルな造形」こそが『スター・ウォーズ』第1作の魂でしたのに、新・三部作は小ぎれいなCGくさいセットが多くてそのへんガッカリです。
話変わって、「帝国」が成立する瞬間、アミダラ女王「自由は、万雷の拍手を浴びながら死ぬのね」と実になかなかカッコいいセリフを口にします。つまり、ファシズム/軍事独裁/警察国家は、民衆の熱狂に迎えられ、国民大多数の総意にもとづき民主主義的に誕生する、ということで、現実の歴史においてナチス・ドイツもワイマール共和国という、民主主義が進んだ国から生まれました。少数意見を抹殺する言論統制は民主主義をファシズムへと誘う。
そして、同様の事態は日本でも着々と進行しているのですね。
町山智浩氏「ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」、「オレの書いた『スターウォーズ』評を配給会社が検閲!」では、『シスの復讐』配給会社が、町山氏の署名入り批評を添削/検閲/言論統制した実態が記されています。
こういう、配給会社による検閲は『シスの復讐』に限る話でもないのでしょうけど、『シスの復讐』の場合は誰かがうっかり「つまらん。面白くない。」と漏らしてしまうと、「そうか! そういわれてみれば全然つまらんな!」と人々の洗脳が解けてしまう「裸の王様」状態なので、ついつい配給会社も言論統制を強めてしまったのではないか? と愚考するのですけど、って町山氏は「つまらない」とは言ってないのに配給会社は過敏に反応し、はからずもアメリカの手先であることを告白してしまっているのですけど、こんなことで『スター・ウォーズ』ファイナル・イヴェントに水をさすことにならなければよいのですが…といらぬ心配をしてみました。
ともかく、シュコー、シュコー言いながらダース・ヴェイダーがジェームズ・R・ジョーンズの声を響かせる瞬間や、タトゥイーンにふたつの夕陽が沈むラストは、なんだかんだ言っても茫然と感動してしまいまして、終わりよければすべてよし、ってわけでもないですが第1作をもう一度楽しむためにもオススメでございます。
★★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2005-Jul-10;